日米通算203勝の黒田博樹氏(42)が、日刊スポーツ独占でお届けする「侍ジャパン随行記」。準決勝進出を決めた侍ジャパンが米ロサンゼルスに乗り込む。決戦の地は、黒田氏が大リーグ・ドジャース時代4年間本拠としたドジャースタジアムだ。自身も経験した注意点を語りつつ、侍ジャパンの世界一を願った。

 重圧を背負いながら戦う侍ジャパンの姿に、胸を熱くさせられた。残り最大2試合。何が起こるか分からないのが短期決戦。強いものが勝つのではなく、勝ったものが強い。日本代表には後先考えずに目の前の試合に全力を尽くし、また日本のファンを熱くさせる戦いを見せてもらいたい。

 準決勝、決勝が行われるロサンゼルスについて語っておきたい。乾燥した気候に惑わされないことが大事になる。投手は握ったときに感じる公式球の質感が変わり、変化の仕方が変わる球種もある。思ったよりも打球が飛びやすい。そういう変化を事前に頭に入れた上で、同じような気候のアリゾナで調整していかなければいけない。侍ジャパンの場合は、東京ドームという屋内球場から屋外球場となる変化も重なる。日本では調子が良かった投手が、米国へ行けば異なる感覚になることもあるだろう。当然逆も考えられる。もう1度ブルペンで調整しないといけない。

 私自身、米大リーグ移籍1年目は、ボールがなじまない感覚があり、本当に試行錯誤した。特にフォーク系の球種は滑る感覚があるかもしれない。調整期間は短いが、選ばれた代表選手たちにはアジャストしていってもらいたい。

 試合中も日本では当たり前のイニング間のキャッチボールもできなくなる。ドジャースタジアムのブルペンは外野にあるので行くこともできない。できていたことができなくなることへの対応も必要になる。

 日本ラウンド最終戦では、先発全員安打と状態の良さを感じられた。先発起用された千賀は、見事に役割をこなした。前回オランダ戦での30球から中2日。立ち上がりはフォークの精度に苦しんでいたが、先に点を与えなかったことが流れを呼び込んだ。また6回から登板の平野の名前も挙げたい。今大会では早い回に起用される役割で、相手の勢いを止める投球を続けている。この日得点が生まれたのは、平野が3者凡退で切った直後だった。

 準決勝での選手起用は、先述したような環境への適応力からの判断になるだろう。ただ、これだけのメンバーがそろう侍ジャパンにレギュラーも控えもない。出場した選手がチームのために全力を尽くすのみだ。

 準決勝以降はこれまでのような大声援はなく、守備のときの静寂は色濃くなるだろう。気持ちの高め方が難しくなるかもしれないが、自分を奮い立たせて鼓舞していくことが大事。米国でも自信を持ってプレーしてもらいたい。