WBC世界バンタム級王者井上拓真(30=大橋)が注目リマッチを制し、2度目の防衛に成功した。
昨年11月以来、約10カ月ぶりに挑戦者の同級1位那須川天心(28=帝拳)との再戦に臨み、3-0の判定勝利を収めた。7回に左ストレートでダウンを喫したが、序盤からテクニック、スピードで最後まで競り勝ち、リベンジを狙う那須川を返り討ちにした。4団体統一スーパーバンタム級王者の兄尚弥(33=大橋)を追い、兄弟で統一王者になる目標を掲げた。
◇ ◇ ◇
1万人の観衆に誇示するように、井上がWBCベルトを高々と掲げた。「期待に応えました!」。4団体統一スーパーバンタム級王者の兄尚弥、トレーナーの父真吾氏、いとこ浩樹、所属ジムの大橋秀行会長に囲まれ「チーム大橋、チーム井上で勝ち取った勝利」と感謝。ファンの歓喜を浴び、満面の笑みだった。
10カ月ぶりのリマッチは前回よりもハイレベルな攻防だった。那須川の左カウンターに対し、序盤で前に出ながらワンツーで対抗。有効打で上回り、4回終了時の途中採点で2-0とリードした。しかし7回には「一瞬の気の緩み」(井上)で左ストレートを浴びてダウンを許した。7回終了時にセコンドの父真吾氏から「やり返せ」のゲキを受け、8回からは猛反撃に転じた。左フックなど手数多く攻め込み、最後まで競り勝った。
「左1発でダウンを食らい、天心選手の成長を感じられた。決して楽な試合ではなかった。だから気合が入って返り討ちすることができた」
24年10月、同学年の堤聖也(角海老宝石)に判定負けを喫し、WBA王座から陥落。「自信過剰」「慢心」の隙はなかったか…。自問自答し、不完全燃焼で負ける悔しさも知った。「堤戦で負け、全部思い知っている。つまずいている暇はない」と緊張感を保てた。
昨年12月に30歳を迎え、今回は9度目の世界戦だった。「負けて、また頑張るというのは…。本当に世界王者である以上、失うものもデカい。いつも崖っぷち」との危機感もあった。今年5月、井岡一翔(志成)から2度のダウンを奪って判定勝利。那須川戦連勝で「尚弥の弟」ではなく、井上拓真としての存在感は増すばかりだ。
来春予定の次戦は、那須川戦に続き、指名試合になる。その先には兄尚弥に続く統一王者の目標がある。「まだまだベルトを増やして、本当に目標とする兄の背中を追いかけて突っ走っていきたい」。国内初の兄弟王者による王座統一というターゲットを見据え、井上はチャンピオンロードを進む。【藤中栄二】
◆井上拓真(いのうえ・たくま)1995年(平7)12月26日、神奈川・座間市生まれ。父真吾氏と兄尚弥の影響で4歳から競技開始。高校2冠後、13年12月にプロデビューし、福原辰弥に判定勝利。15年7月に東洋太平洋スーパーフライ級王座獲得。18年12月にWBC世界バンタム級暫定王座奪取も19年11月に正規王者ウバーリ(フランス)との統一戦で敗退。23年4月、WBA世界バンタム級王座を獲得し2度防衛。25年11月、那須川天心に判定勝ちしWBC世界同級王座を獲得。26年5月、井岡一翔に判定勝利し初防衛。身長163センチの右ボクサーファイター。
★前回VTR WBC世界バンタム級王座決定戦(25年11月24日)で拳を交えた。1、2回に那須川はクリーンヒットを決めて好スタートも4回から井上が反撃開始。同回終了時点の公開採点は38-38のイーブンだった。中盤のペース争いはやや井上が優勢で8回終了時点の採点は2-0で井上がリード。終盤は那須川のパンチの精度が落ち、井上が手数で上回った。判定は2人が116-112、1人が117-111で井上が3-0で勝利を収めた。
◆同一ジムの複数世界王者記録 同時5人の世界王者は最多。これまで帝拳ジムの同時4人が最多。12年7月~同10月に西岡利晃(WBCスーパーバンタム級)、粟生隆寛(WBCスーパーフェザー級)、山中慎介(WBCバンタム級)、五十嵐俊幸(WBCフライ級)が保持。14年12月~15年11月に山中、三浦隆司(WBCスーパーフェザー級)、ホルヘ・リナレス(WBCライト級)、カルロス・クアドラス(WBCスーパーフライ級)が同時に世界王者に。また15年11月~16年3月に山中、クアドラス、リナレス、木村悠(WBCライトフライ級)が同時にベルト保持した。

