スターダムの「ゆずポン」こと愛川ゆず季(29)が全体の31%の票を獲得し、12年の日刊バトル大賞女子プロレス部門MVPを2年連続で獲得した。WAVEなどで活躍するフリーの紫雷美央(24)との接戦を3ポイント上回った。来年4月29日のスターダム両国大会での引退を発表しており、現役選手としての受賞は今回が最後となる。

 全力で走り続け、数々の夢を実現したゆずポンの1年を、ファンは見ていた。1人ひとりの支持が集まっての2年連続MVPだ。「私はプロレスがうまいわけでも、運動が特別得意なわけじゃない。一生懸命、全力と意識してきた。それを見てくれたことがうれしい」と笑顔を見せた。

 「グラレスラー」という独自の分野を確立した昨年を、さらに進化させた1年だった。4月に故郷の愛媛・新居浜で凱旋(がいせん)興行「ゆずポン祭」を開催。家族や子どものころに世話になった人々に成長を見せることができた。リング上でもワンダー・オブ・スターダム王座の防衛回数を5回に伸ばし、シングル最強決定リーグ「5★STAR

 GP」でも初代女王となった。先輩として、夕陽ら新人レスラーのデビュー戦の相手も務めた。一方で自信が率いるユニット「全力女子」裏切った鹿島沙希を圧倒的な力で制裁するなど「殺気」を感じさせる闘いも見せた。

 順風満帆に見えた1年だが、大きな挫折も経験した。5月3日の後楽園大会を腰の負傷で欠場し、タッグパートナーだった美闘陽子(引退)とのワンダー・オブ・スターダム王座防衛戦が消滅した。ファンの期待を裏切る形になった。「人生で一番つらい経験だった」と振り返る。

 それでも現実から逃げることなくリングからファンに謝罪した。その後も関係者席に残り、悔しさで赤くした目でリング内の闘いを見つめ続けた。「申し訳ない気持ちを自分でファンに伝えないと、と思っていました。でも、あの悔しい経験があったから、もっと頑張れた。腰が痛かったら違う部分を鍛える。今までよりプロレスに割く時間が多くなりました」。挫折がプロレスラーとしての器を、さらに大きくした。

 プロレスラー愛川ゆず季が見られるのもあと4カ月となった。引退試合となる来年4月の両国大会でメーンを務めるために、直前に迫った24日の後楽園大会で高橋奈苗が保持する団体最高峰タイトル「ワールド・オブ・スターダム王座」を奪取するつもりだ。「これまでの応援に感謝しています。そういう方々への感謝の気持ちを込めて、全力で戦います」。最後まで代名詞の「全力」で走り抜ける。【来田岳彦】

 ◆愛川ゆず季(あいかわ・ゆずき)1983年(昭58)5月16日、愛媛県新居浜市生まれ。03年にタレントデビュー。バスト100センチの爆乳とクラシックバレエで鍛えたしなやかな肉体でグラビアを飾り人気アイドルとなる。10年5月からプロレス練習を始め10月31日、高橋奈苗戦でデビュー。テコンドーの経験を活かしたゆずポンキックで活躍する。11年1月のスターダム旗揚げに参加。同7月にはワンダー・オブ・スターダム王座を獲得。デビュー9カ月でシングル王者となる。同年11月には美闘陽子(引退)と組んでタッグ王座、今年9月にはシングル最強リーグ「5★STAR

 GP」を制し、初代女王となった。158センチ、50キロ。血液型B型。◆MVPトップ3(1)愛川ゆず季31%(2)紫雷美央28%(3)栗原あゆみ19%