日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。


ここからこのサイトのナビゲーションです




WEB企画

OGGIの「毎日がW杯」

OGGIの「毎日がW杯」

荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。

PK戦勝利チームの次戦は5勝15敗


 W杯に涙はつきもの。いろいろな涙を見てきた。歓喜の涙、悲哀の涙、傷心の涙、苦痛の涙…、ジュリオセザールやネイマールの目にあふれたのは、そのどれでもなかったように思う。極度の緊張感から解放されて、ピッチの上に座り込んだ。

 決勝トーナメントのトップを切って行われたブラジル-チリ戦。1-1の末に延長戦でも決着がつかず、PK戦で優勝候補最右翼の地元ブラジルが制した。

 W杯のPK戦には、ドラマが詰まっている。4年間に1度の大会、たった1本のPKを失敗すれば、すべてが終わる。94年米国大会の決勝戦ではイタリアの至宝バッジョがミス、過去にもプラティニやストイコビッチら多くの名選手が外して「伝説」になった。

 かつて、延長でも決着がつかない場合は、再試合だった。しかし、日程の関係で再試合が不可能となり、PK戦を導入。本大会で初めて行われたのは82年スペイン大会準決勝、西ドイツ対フランス戦だった。

 1-1から突入した延長戦でフランスが3-1とリード。しかし、西ドイツは負傷をおして途中出場したルンメニゲの活躍で追いつき、大会初のPK戦へ。シュティーリケの失敗でPK戦でもリードを許した西ドイツが、強靱(きょうじん)な精神力で6人目までもつれ込んだ激戦を制した。

 これまでに是非が議論されたこともあった。「運で左右される」ことが否定的にもとらえられた。「残酷で、選手の精神的な負担が大きすぎる」という意見もあった。しかし、代替案は見つからず、今でも続いている。

 しかし、本当に「運」なのだろうか。ドイツは西ドイツ時代から合わせて4回あったPK戦にすべて勝利している。06年準々決勝のアルゼンチン戦では、GKレーマンが同僚のGKケプケから渡されたメモをストッキングに忍ばせ、チームを勝利に導いた。メモにはアルゼンチン代表選手のPKの癖が書いてあった。PK戦が「運」だとすれば、それをたぐり寄せる実力も必要だということだ。

 ただ、PK戦が選手に負担を強いているのは間違いない。延長まで120分を戦い、心身ともに極限の状態で臨む。その影響は、確実に次戦にも及ぶ。

 前回の大会まで、本大会で行われたPK戦は22回。決勝戦の2回を除いた延べ20チームが次の試合に臨んでいる。結果は5勝15敗。「PK戦で波に乗る」チームよりも「PK戦で力を使い果たす」チームの方がはるかに多い。

 82年の西ドイツは難敵フランスを下して決勝に進んだが、ロッシのイタリアに完敗した。最近3大会だけを見れば、PK戦で勝ったチームはすべて次戦で敗れている。

 ブラジル国民は「優勝への難関を突破した」と大喜びだろうが、続く「南米決戦」の相手コロンビアも手ごわい。後半途中から選手たちの足が止まるなどスタミナに不安があり、ネイマールも足を痛めている。ベスト8で足もとをすくわれる可能性も、決して少なくはなさそうだ。

 ウルグアイは得点源のスアレスを「かみつき」で欠いて敗れたが、コロンビアはロドリゲスが絶好調。ブラジルにとっては厳しい戦いが続く。PK戦のドラマは、その試合だけで終わらない。「波に乗った」のか「力を使い果たした」のかは、コロンビアとの準々決勝で分かる。

















ここからフッターナビゲーションです


PAGE TOP