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OGGIの「毎日がW杯」

OGGIの「毎日がW杯」

荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。

「ミネイロンの惨劇」はなぜ起こったのか


 起きていることが、信じられなかった。前半11分、ブラジルはドイツFWミュラーに先制点を許す。CKでマークを外されるというミス。ここまでは、よくある話だ。「ブラジル攻撃陣がギアを入れて猛攻を仕掛け、ドイツがGKノイアーを中心に巧みに逃げる」という展開を、世界中の誰も予想したことだろう。

 ところが、その後の展開はドイツのレーウ監督でさえ「予想できなかった」ものになる。23分にゴール前でミュラーと入れ替わる動きからFWクローゼが加点すると、ドイツの攻撃練習が始まった。1分後には緩慢な相手の中盤からボールを奪い、MFクロースがゴール。2分後にクロース、さらに3分後の29分にはMFケディラまで続いた。

 5-0。この時点で勝敗は決した。「武士の情け」なのか、手ごたえのないブラジルに面食らったのか、イケイケのドイツは少し攻撃の手を緩めた。もし、そのまま中盤での激しいチェックとゴール前へのスピード感あふれる動きを続ければ、2ケタでも得点できた感じ。それほど、ブラジルの守備は崩壊していた。

 ブラジルの7失点は、W杯ではもちろん最多。すべてのAマッチを通じても、34年にユーゴスラビアに4-8と敗れて以来80年ぶりだ。6点差の敗戦は、20年にウルグアイに0-6で敗れて以来94年ぶりのタイ記録となった。さらに、クローゼには母国の英雄ロナウドのW杯通算15得点を抜く16点目を決められる始末。過去破壊的な攻撃力で「記録ラッシュ」をしてきたブラジルが、大敗での「記録ラッシュ」を演じた。

 50年ブラジル大会決勝リーグでウルグアイに敗れ優勝を逃した「マラカナンの悲劇」を上回る「ミネイロンの惨劇」。64年前はスタジアムで自殺とショック死で4人が犠牲になったと言われるだけに、今回2億国民が受けたショックは想像に難くない。すでに各地で騒ぎは起きている。今後、ブラジル全土に多くの波紋が広がっていくはずだ。

 「サッカーボールを抱いて生まれる」と言われるサッカーの国。国民全員が代表監督でもあるブラジルだけに、今後は「戦犯」探しも行われる。大きな敗因はネイマールとチアゴシウバという攻守の中心を欠いたこと。不用意な警告で出場停止になったチアゴシウバへの風当たりは強くなりそうだ。さらに、ネイマールを骨折させたコロンビアのDFスニガへのバッシングも激しくなるだろう。

 もっとも、この敗戦は選手個人というよりも、チーム作りにありそうだ。スタメンと控えの差が大きすぎた。個の力でいえば、ネイマールとチアゴシウバに代わった選手もそう劣らないはずだ。ただ、チームの中では機能しなかった。

 確かにネイマールは抜群の存在だった。この大会でも、ネイマールが絡まない攻撃はほとんどなかった。オスカルは調子を落とし、フッキはパワーばかり。仮にカカやロナウジーニョら「違い」を生み出す選手がいたら、ネイマール抜きでも攻撃になっただろう。

 守備はもっと悲惨。ダビドルイスはチアゴシウバがいてこそなのだ。ダンチと組んだこの日は、バタバタ感ばかりが目立った。2点目を奪われて選手が浮足立った時、落ち着かせる選手もいなかった。チームの一体感もなかった。チアゴシウバに頼ってきたツケが、一気に噴出した。

 王国ブラジルでも、こういうことが起こりえる。世界中にサッカーの怖さを思い知らせる試合になった。ただ、ドイツの「強さ」に対して「弱さ」しかなかったブラジルを見ると、この敗戦はネイマールとチアゴシウバを欠くことが決まった準々決勝で決まっていたのかもしれない。























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