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OGGIの「毎日がW杯」

OGGIの「毎日がW杯」

荻島弘一(おぎしま・ひろかず):1960年(昭35)東京都出身。84年に入社し、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当して96年からデスク。出版社編集長を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。

カギ握るメッシ主将 歴史は繰り返すのか


 アルゼンチンが、驚異的な「守備力」で24年ぶりの決勝に進出した。オランダとの準決勝は、前日のドイツ-ブラジル戦と違って緊迫したゲームになった。中盤でつぶし合い、ともにほとんど決定機を作れない展開。メッシとロッベンは厳しいマークにあって仕事ができず。ゴールがないままに、時間だけが過ぎた。

 ともに決勝進出を目指して、堅い試合運びだった。5バックの守備的な布陣をとったオランダは、メッシを徹底マーク。ほとんど仕事をさせなかった。アルゼンチンも、ロッベンにスペースを与えなかった。イグアインとファンペルシーの点取り屋は、試合に入ることすらできなかった。

 1次リーグから派手なゴールの奪い合いが多かった大会。自らの武器を正面から相手にぶつける試合は、見ていても楽しかった。しかし、決勝トーナメントからは現実的な「勝つサッカー」に変わった。この試合は、その典型。互いに相手の長所を消し、攻撃を機能させないサッカーだった。

 特に、アルゼンチンのマスケラーノはすごかった。171センチの体が、ピッチのあらゆるところに顔を出した。180センチのロッベンを体でストップ。信じられない運動量と集中力で、次々とオランダの攻撃の芽をつんだ。マン・オブ・ザ・マッチにはGKロメロが選ばれたが、完封した立役者はマスケラーノだった。

 オランダは準々決勝コスタリカ戦での奇策「PK戦用GK」が使えなかった。交代枠を使いきっていたからだ。前半にたびたび右サイドを崩されて警告を受けた左サイドバックのマルティンスインディをハーフタイムで交代したことが、ファンハール監督の計算を狂わせたのかもしれない。

 「PKが苦手」なGKシレッセンを相手にするアルゼンチンが、精神的に優位に立ってPK戦を迎えたのは間違いない。ただ、オランダはもともとPK戦に弱い。過去W杯と欧州選手権で5回あったPK戦で勝ったのは1回だけ(コスタリカ戦が2勝目)。最後の最後で「勝負弱い」オランダが顔を出しただけだ。コスタリカ戦とキッカーの顔ぶれを変えるなどファンハール監督は策を練ったが、最終的には「策士が策におぼれた」のかもしれない。

 アルゼンチンは90年大会以来の決勝進出。90年大会は1回戦でブラジルに1-0、準々決勝でユーゴスラビアに0-0からのPK戦勝ち、準決勝でも地元イタリアに1-1からPK戦勝ち。内容的には、いずれも負け試合だった。警告覚悟の激しい守備とGKゴイコチェアの神懸かりセーブ、そしてマラドーナの「一発芸」だけが武器だった。

 今大会も、決勝トーナメント3試合で奪ったゴールは24年前と同じ2点。弱いと言われた守備が奮闘し、GKロメロが活躍、攻撃はメッシ頼みと、90年のチームに似ている。そして、決勝の相手がドイツ(90年は西ドイツ)というのも、まったく同じになった。

 90年大会、主力5人を累積警告による出場停止で欠いたアルゼンチンは「史上最低の決勝進出チーム」と言われた。終了間際にブレーメにゴールを許して0-1。大会中から相手チームや報道陣への暴言ですっかり評価を落としたマラドーナは、準優勝に終わったピッチの上で号泣した。

 歴史は繰り返す。今回のメッシ主将は24年前のマラドーナ主将ほど「悪者」ではないし、戦い方も酷くはない。ただ、ブラジルを7-1と粉砕したドイツに勢いがあるのも確か。守備のターゲットを絞りにくいのも試合を難しくさせる。再び準優勝に終わるのか、28年ぶりの優勝を手にするのか、カギを握るのはやはりメッシになるのだろう。

















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