初物ずくめだった。2番人気セイウンハーデス(牡4、橋口)が直線で抜け出し、6度目の挑戦で初の重賞タイトルを獲得した。

デビュー30年目の幸英明騎手(47)は初の福島重賞勝利。さらに管理する橋口慎介調教師(48)は、JRA芝重賞で初めての勝利をおさめた。サマー2000シリーズ初戦を制し、夏の中距離王候補に名乗りを上げた。

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伝えたのは感謝だった。大勢のファンが押しかけたウイナーズサークルでの勝利騎手インタビュー。幸騎手は喜びをそこそこに、表情を引き締めた。「能力がある馬ですが、うまく乗れない時がありました。それでも乗せ続けてくださった西山オーナー、橋口トレーナーには感謝しかありません」。その言葉を聞いた西山オーナーは、穏やかに口元を緩めた。

セイウンハーデスが先頭でゴール板を駆け抜けた。好スタートを切ると無理に主張せず、道中は先団の外めを追走。逃げて2着に粘った前走とは異なる競馬になった。それでも幸騎手は「2、3番手につけるイメージで臨みました。道中はいい手応えでしたよ」。理想通りの展開だった。2番手で直線に入ると、目いっぱいに追った。迫ってくる他馬を置き去りにした。

関係者は充実の表情を浮かべる。初のJRA・芝重賞勝利を手にした橋口調教師は「これまでダート重賞は勝っていたんですけど、中央の芝は初めてですからね。やっぱりうれしいです」と笑顔。馬主の西山オーナーは18年東スポ杯2歳S以来、約5年ぶりのJRA・芝重賞制覇だった。「うれしい。最高。この馬は2000メートルが本当に得意だね」。馬をねぎらうと、さらに言葉に感情を乗せた。「やっぱりこの馬のことは幸騎手が一番理解してくれているね」。

デビューから11戦。コンビを組まなかったのは1度だけ。手塩にかけて育ててくれた鞍上との勝利だから、なおさらうれしかった。今後は9月3日の新潟記念(G3、芝2000メートル)が目標だ。レース後、幸騎手と西山オーナーはがっちりと握手をかわした。サマー2000シリーズの主役に立候補したセイウンハーデス陣営の絆が、より強固になった瞬間だった。【阿部泰斉】

 

セイウンハーデス▽父 シルバーステート▽母 ハイノリッジ(マンハッタンカフェ)▽牡4▽馬主 西山茂行▽調教師 橋口慎介(栗東)▽生産者 鮫川啓一(北海道浦河町)▽戦績 11戦4勝▽総収得賞金 1億2608万4000円▽馬名の由来 冠名+ギリシャ神話の冥府の神