お昼が過ぎると、状況打開へ「レッスンプロ」が動いた。「いろいろなエサを試してみよう」。これまで使っていたオキアミに加え、モエビ、イシガニ、ボケなどを試した。これが当たった。鈴木さんのサオが勢いよくしなる。イシガニに食い付いたのは43センチの立派なクロダイ。その後もイシガニで鈴木さんに計3回のアタリがきた。「クロダイの成魚は甲殻類、貝類も食べる。今日はイシガニが当たるかもしれない」。言われるがままにイシガニを試すと、すぐにアタリがきた。30センチのかわいいクロダイだった。「鈴木さんの言う通りだ」。

 沖上がりまで残り1時間を切った。「あと1匹、イシガニ以外でも釣ります」。自分の成長のために宣言した。サオ先のわずかな動きに全神経を注いだ。希望を込めてボケを海に落としたその時、「ブルルンッ」。「きました!」。じっくりと駆け引きをしながらリールを巻いた。38センチのクロダイだ。「やったー!」。何とも言えない喜びの感情がわき上がってきた。「最後は自力で釣ったね。よく頑張った」。鈴木さんからもお褒めの言葉をいただいた。

 この日は12人がサオを出し、計34匹が釣れた。そのうち年無しは4匹もあがった。この日最大の55センチを釣った広瀬智一さん(34=山梨県甲斐市)は計7匹中3匹が年無し。「(釣れた時のエサは)ボケとコーンの抱き合わせ。いつもより大きい引きだった。午前中に2回切られていて、お昼過ぎにバタバタッときた」と話した。

 原金の吉原浩二船長は「この調子は4月中旬まで続きそう。今年のクロダイはダンゴが割れてから食うまでに時間がある。我慢して待つことが大事だ」。

 最低限のリベンジは果たした。しかし、このシーズンの醍醐味(だいごみ)である年無しを釣ることはできなかった。「また来年、来ます」。新たな目標を、富士山に誓った。【松尾幸之介】

 ▼船 清水「原金つり船」。2月は午前6時半、3、4月は午前6時出船。料金は平日1人6696円、2人9072円、3人1万1448円。土日祝は1人8316円、2人1万800円、3人1万2960円。料金は船宿へ要確認。親船で運ばれてくる昼食には別料金で鍋焼きうどんなどを選択でき、備え付けの火鉢で温めながらいただくことができる。2月いっぱいまで「第31回清水港黒鯛釣り競技大会」の予選会を毎日実施中。詳細は船宿まで。【電話】054・352・3065。