栃木・那珂川、茨城・久慈川、山梨・桂川ほか各地で6月1日、アユが解禁となった。「天然そ上!清流の里 鮎の那珂川」を掲げる同河川の高岩大橋河川敷には、前夜から解禁を待ちわびるファンがテントを張って過ごした。毎年同所で解禁に挑む「鮎道楽」リーダー吉田英雄さん(66)、副リーダー古川忠明さん(66)も15人ほどの仲間と解禁に挑んだ。

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5月27日の雨の影響で増水し、石も見えない状況だった。午前7時ころから挑戦した人たちのほとんどが苦戦していた。だが、ベテラン2人は違った。状況を見極め、水温が上がる午前10時ころまで川には入らなかった。「増水に加えて、今日は水温が14度と低め。少しでも水温が上がった方がアユの活性は上がる」と説明。「例年なら護岸の切れ目あたりが狙い目になりますが、今年は増水の影響で入れないので、サオが届かないかもしれない。でも、やってみましょう」と続けた。川に入る前、古川さんはお神酒を川に注いだ。「川とアユに感謝し、釣り人の安全を祈りました」。

サオ出しから約20分。「来たよ!」。他の釣り人が苦戦する中、吉田さんが狙いのポイントで初アユをゲット。アユを外している間に、古川さんがしれっとポイントに入る。「オイオイ!」と苦笑する吉田さんだったが、ここで古川さんも初アユをゲット。「アユ釣りは1に場所、2に仕掛け。でも、知らない人のところに入ってはダメですからね」と笑った。

古川さんはアユを取り込む際、下流で掛かったアユを1度水中から抜いて、上流に移動させると再び水に入れ、自分に近づいたところでタモに入れた。「那珂川を全国的に有名にした達人、諏合正一さんの“つばめ返し”という技なんです」と説明した。「今のような(カーボン製の)サオではなく、竹ザオだった時代に有効な取り込み方ですね」と吉田さんは続けた。

結局、吉田さんは午前&午後の計2時間ほどで最大18センチ含む13匹をゲットし、高岩大橋での竿頭となった。「昔は60~70匹釣れたけど最近はよくない。那珂川は天然アユが遡上(そじょう)して来るけどまだ小さい。それでも、徐々にサイズアップしていったし、黄色が濃く、しっかりスイカのような香りもしていました」と吉田さん。「追いが今イチだったので、掛け針の先を少しずつ長く出したり、オトリアユが小さくて浮いしまうのでオモリを打ったりと、いろいろしましたが、釣れてよかった」と笑った。まさに、“ベテランの技”で掛けた。古川さんは「ここは山百合が咲き始めるお盆あたりになると、大きな天然アユが釣れるので、そのころにぜひまた来てください」とアピールした。

那珂川北部漁協によれば、この日の午前中に解禁を楽しんだのは約600人。釣果は渋めだったが、漁協関係者は「水温が低めだったことと27日の雨の影響が大きかったですね。でも、毛針は70匹釣れています。今日は毛針が有利だったようです」と話した。

山百合の咲くお盆のころが楽しみになりそうだ。 【川田和博】

○…那珂川上流部の黒磯公園前の午前7時ころは、黒山の人だかりとなった。同所に挑んだ「鮎道楽」有本浩一さん(40)は、「人がいっぱいで身動きが取れませんでした」と笑い、「型は16~17センチ。終日で20匹だったので、まずまずでした」と話した。同所では25日実施の試し釣りで、6人が約2時間ほどで計35匹を釣り上げていた。この情報で人が集まったが、増水でアユが散った。「場所ムラもあったし、午前中はゼロの人もいました。釣れ始めたのは水温が上がり始めた午後でしたね」と話した。

○…山梨・桂川でも解禁を迎え、約2500人(桂川漁協調べ)が解禁を楽しんだ。「笹子川と葛野川では束釣り(100匹)超えも出ました。本流の猿橋でも80匹以上でしたので、今年はいい解禁日になっています」と漁協関係者は声を弾ませた。昨年の解禁日、ユーチューブ動画「ニッカン釣りちゃん」に出演した細田充(71)さんも「今年の桂川は絶好調でした」。今年はサオを出さず、鶴川や柳川で釣り教室の講師を務めた。昨年は前日の雨にやれたが、「今年は濁りがなく、アカも安定していました。今後も楽しみですよ」と語気を強めた。