旬を迎えて脂が乗った寒ヒラメを仕留めようと先日、三重・鳥羽・石鏡の乗合船「幸徳丸」(日刊銀鱗倶楽部加盟店)で伊勢湾に出た。大寒波で波が高く、釣果は伸びなかったが、常連が72センチの良型を仕留めたほか、50センチのヒラメ、90センチの寒ブリやメジロに85センチのスズキが上がった。悪条件の中、今か今かとヒラメのアタリを追い続けた末に良型を手にし、喜びをかみしめる姿を見てあらためてヒラメ1匹の価値の大きさを感じた。【近江康輔】

   ◇   ◇   ◇

ヒラメはコツコツと前アタリが出てから、本アタリを待って合わせるまでのドキドキ感がたまらない。合わせのタイミングを見極め、良型を手にしたときの喜びは格別で仕留めた感が大きく、やみつきになってしまう。当日も、そんな伊勢湾のヒラメ釣りに魅了された人たちばかり。

だが、寒波の到来で風がビュービューと吹きつけ、白波が立つ悪条件に四苦八苦。手持ち竿で底の起伏をトレースするように生き餌を泳がせていくのだが、波で竿が上下し、これを繰り返すのが難しい。

そんな中、最初に竿を曲げたのは、夫婦で釣行の山口香織さん(堺市)。竿を満月にしならせて「全然上がってこないです」と必死で応戦。10分ほどの格闘の末に仕留めたのは、丸々と肥えた90センチの寒ブリだった。続けざまに記者も85センチのスズキを食わせて船長がタモ入れ。「伊勢湾の青物やヒラメはベイトをたっぷり捕食しているのでおいしいよ」と声を弾ませる。

青物がベイトを追っているのなら、ヒラメも近くにいるはずと我慢強く船の揺れに耐えながら底どりを繰り返す。すると4時間ほどしたとき、左舷の常連・山中昇さん(枚方市)が待望の本命アタリをとらえた。ロッドをゴンゴンとたたく締め込みを慎重にかわして浮かせたのは、ずっしりと重い72センチの寒ヒラメ。山中さんが思わず「こんなヒラメが釣れるから、伊勢湾通いがやめられないんです」とにんまり。この良型ヒラメにほかの人もが然、気合が入るが、その後は一段と波、風が強くなり、かじかむ手でロッドを握りしめての奮闘が続く。

伊勢湾のかけ下がりや、岩礁まじりのヒラメポイントを知り尽くしたベテラン船長が移動を繰り返すが、ヒラメはご機嫌ななめ。波が高いために底で生き餌をうまく泳がせていないのかと疑心暗鬼になる。

そんなアタリがない時間帯が続き、あきらめムードが漂うラスト1流し。「昨年の同時期に5匹もヒラメを仕留めてこの釣りにハマっている」香織さんの夫・智司さんが執念でアタリを引きだし、50センチのヒラメをゲット。力尽きた午後3時ごろに終了した。大型ヒラメはこれからが本番。次は座布団級を仕留めるぞとリベンジを誓い、沖をあとにした。釣行後の24日は竿頭で45~63センチのヒラメ4匹に加え、ブリやメジロも釣っており、魚の活性が上がれば数、型ともに期待できそう。

【今後の見通し】ヒラメは3月末までが釣期。これからは80センチ級の大型が期待でき、4月の産卵に向けてさらに脂の乗りが増すので楽しみだ。引き続き、青物や、マダイ、根魚も狙える。

【問い合わせ】幸徳丸 【電話】090・7303・5080。乗合船料金は1日便1万5000円(餌、氷付き)、午前6時半集合。3月から午後便も出船予定。集合時間は午前11時半。同所には、三幸丸(日刊銀鱗倶楽部加盟店)【電話】0599・32・5604もある。

【交通】バスなら、鳥羽バスターミナルから約40分で石鏡漁港へ。車は大阪から名阪国道、伊勢自動車道、伊勢二見鳥羽ラインを経由。鳥羽IC交差点から国道42号へ。鳥羽駅を過ぎて同167号へ入り、安楽島大橋を渡り、県道750号から同128号(パールロードシーサイドライン)へ。約20分走ると石鏡漁港がある。