東京湾でカワハギのシーズンを迎えた。千葉・内房の金谷「光進丸」(岡澤裕治船主)では早くも20センチを超える良型が出ている。釣趣のある人気魚だが、少しでも油断をするとエサのアサリを取られてしまう。仕掛けと腕を駆使して、かすかなアタリを見逃さずに掛けられるか? 「エサ取り名人」のカワハギ対「腕に覚えのある釣り迷人」の船を舞台にした「メイジン戦」、始まり始まり。

光進丸のカワハギ釣りに参加した皆さん
光進丸のカワハギ釣りに参加した皆さん

★水深は15メートル前後

カワハギの活性は、午前7時の開始早々から高かった。金谷沖の水深15メートル前後で1投目からブルブルッとアタってくる。サオ先をよく見て、手元の感触(通称「魚信」)に敏感になっていればビシッとアワせられる。釣り人側が「鈍感力」を発揮してしまうと、3~4本針に付けていたアサリはきれいさっぱりなくなっている。いわゆる「ツンツルテン」。エサ取り名人の本領発揮で、カワハギに軍配が上がる。

タタキ釣りで釣果を伸ばした宗藤謙治さん
タタキ釣りで釣果を伸ばした宗藤謙治さん

そんな船上で、右舷トモ(最後方)の宗藤謙治さんがいきなり掛けた。10センチ程度のワッペンサイズではあったが、一気に活気づいた。「オモリが底に着いたら、糸を張らず緩めずのゼロテンにして5回ほど手首を返して仕掛けを揺らし、30センチほど底から上げ少し止めます。そこから少し引き上げて、下げて食わせます」。


宗藤釣法を左隣でマネしていた、仲間の岩脇良枝さんのサオ先がブルブルッと震えた。しっかりアワせて食わせた。途中で居食いしてフワッと軽くなるのもカワハギが掛かっている証拠。獲物の重みを感じながら取り込んだ。

宗藤さんに教えてもらい良型カワハギを釣り上げた岩脇良枝さん
宗藤さんに教えてもらい良型カワハギを釣り上げた岩脇良枝さん

ワッペンが釣れれば、群れの中に20~25センチサイズもいる。「派手に動かしてワッペンしか釣れなかったら、そんなに誘いを入れないでジッと待った方がいいかもしれません」と宗藤さんは教えてくれた。


アタリの後のアワセは、ほかの釣り物の経験が生かされる。人によって「ヘラブナ釣りのウキが少しだけ沈んだ時にビシッとサオを立てる感じ」とか、「アタリが小さい時のブラックバスがかすかにコツンと触った瞬間にロッドをアオるのに似ている」と話す。アタリを見極めれば、釣果に結び付いた。12人がサオを出して10~25センチが2~17匹。終日ポツポツと食った。トラギスやベラ、フグ、キタマクラなどのゲストが釣れるのはご愛嬌(あいきょう)。この時季としてはまずまずの釣果だった。

食いが立つと仲良くダブルヒット
食いが立つと仲良くダブルヒット

★タタキ釣り有効

今回の釣行では、このタタキ釣りが有効だった。ほかにも左舷ミヨシの戸倉潤也さんがサオを頭上まで大きくアオってゆっくり落とし込んでいた。上げた後に下げてカワハギに興味を引かせた。


この釣りは、カワハギの「虫の居どころ」によって、その場その場で釣り方が変わる。もっと激しく底をたたく時もあれば、潮の流れに仕掛けをたるませて道糸の横走りでアタリを取る「たるませ釣法」、仕掛けを海底にはわせる「ハワセ釣法」、オモリを上下に動かして誘う「誘い釣り」などがある。パターンをつかめれば数に直結する。


内房ではまだシーズンが始まったばかり。秋が深まればピークに達する。今は身の方がおいしいが、寒くなるにつれて肝が大きくなれば、もっと釣って楽しく、食べておいしくなる。【赤塚辰浩】


■TPR開発糸「ヤーナブル」 アタリ逃さぬ素材の確かさ

今回の釣行は、自動車部品メーカー「TPR」が新たに開発した釣り糸「Yarnable(ヤーナブル)」を使っての試し釣りとして開催された。ヤーナブルは、カーボンナノチューブという素材で感度と強度を重視。ナイロンやフロロカーボン、PEと違って、かすかなアタリも逃さない。糸の浮力もないため、海面よりも上で道糸が風にアオられることもないという特長がある。繊細な技術が要求されるカワハギ釣りで、参加者はその素材の確かさを実感した。

ヤーナブルの釣り糸でアタリを取ってカワハギを上げた男沢竜次さん
ヤーナブルの釣り糸でアタリを取ってカワハギを上げた男沢竜次さん

今回は戸倉さんに誘われたという左舷トモの男沢竜次さんは、どちらと言えばカワハギは釣り物の中でも不得手。「アタリの伝わり方が違う。潮の抵抗がないので楽しく感じます」と語った。左舷ミヨシから2人目の梅林薫さんは、「目と手でアタリが判断できた」と言う。

TPRではほかの魚種も含め、今後も試し釣りを開催していくとしている。


■カワハギ 肝醤油、刺し身絶品

フグ目カワハギ科。本州から九州まで広く分布しており、最大30センチほどまで成長する。沖釣りではほぼ周年狙えるが、東京湾では秋から冬にかけて狙う船宿が多く、肝が大きくなる冬場が旬。名前の通り、ざらざらした皮に覆われており、小さなおちょぼ口に頑丈な歯が生えており、貝などの硬いものもかみ砕いてしまう。ヒレを器用に動かして海中で静止しながら捕食するため、釣り人が気づかないうちにエサを取られてしまうことが多い。肝としょうゆであえて食べる刺し身は絶品。干物にしてお酒やみりんなどを塗ってあぶり、ゴマを振って食べてもうまい。


■アサリ エサ付け大事

カワハギ釣りで肝心なのは、アサリのエサ付け。先端が黒ずんで管が2つ並んでいるような部分の「水管」、少しオレンジがかった「ベロ」、中心部でぷっくりとふくらんで中身が黒く見える「ワタ」の3カ所に針を通す。その基本手順を説明しよう。


(1)水管 利き手(右利きの場合)で針を持ち、左手でアサリを手にしたら、黒ずんだ部分の少し下側に針を通す

エサのアサリはまず水管に針を通す
エサのアサリはまず水管に針を通す

(2)ベロ できるだけエサをまとめるためにアサリをひねりベロの下側(水管と離れた側)から刺す

次にひねってベロに刺す
次にひねってベロに刺す

(3)ワタ 最後に針先を刺し込む

最後はワタに刺す
最後はワタに刺す

高活性時には手返しをよくして数を稼ぐため、水管だけ使う。人によっては、ワタにだけ針を刺す。アサリが大きな場合は半分に切る。水管を取り、ベロとワタが半分になるように切ってどちらか一方を使うなど、状況に応じて使い分けるといい。


【今回の仕掛け】

◆サオ 7・3調子の軟調カワハギ専用ザオ

◆道糸 ヤーナブル0・7号

◆リーダー 1・75号1メートル 

◆ハリス 2号60センチ

◆枝ス 2号で上の針2本の長さは6センチ、吸い込み針7号、下の針は8センチ、ハゲ針4号

◆オモリ 25号