<心不全(4)>

 重症心不全の治療として、「心臓移植」があります。しかし、日本の移植数はどの臓器においても、極めて少ないのが現状です。心臓移植は年間50件前後という状況。心臓移植ドナー不足で、ほとんど行われていないのです。また、人工心臓は機械であることから、いつ不具合が生じないとも限りません。

 それに対して、大きな動きが2016年にありました。「心臓シート」が保険適用となったのです。心臓シートは、重症心不全の患者さんを対象として使われる再生医療品です。患者さん自身の太ももの筋肉組織の細胞を培養して作られます。

 サイズは直径4センチ、厚さ0・1ミリほどの薄いシート。これを心臓患部に複数枚を直接貼りつける治療法です。心臓シートが機能しなくなった心臓の患部で、心臓を修復して症状を改善し、全身へ血液を送り出す機能が高まるのです。広く普及していく治療法として大きな期待が寄せられています。この治療法を開発したのは、大阪大医学部心臓外科の澤芳樹教授です。

 そして、心臓シートの先にあるのがiPS細胞を利用した治療法。澤教授と京都大の山中伸弥教授によって、08年から共同研究されています。システムは心臓シートに似ていますが、さらに重症の患者さんを救えるようになる、と期待されています。まさに医療の進歩は日進月歩です。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆重症心不全 心不全に対しての「薬物療法」や「ペースメーカー植え込み」などの内科的治療、または外科的治療でも効果が得られないような重症の心不全。