本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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「混合性尿失禁」の治療法についてお話しします。これは、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状を持ち、かなり多くの人に見受けられます。腹圧性尿失禁がある人のうち約3人に1人が混合性尿失禁といわれています。閉経期を過ぎるころからこのタイプが増え始め、高齢になるにつれて尿の悩みが深刻になっていきます。

混合性尿失禁には腹圧性尿失禁が優位なものと、切迫性尿失禁が優位なものがあり、治療は強い症状が出ているほうに合わせて行います。「たまに尿意が我慢できなくなることもあるが、歩くだけでもれるほうがずっと困る」という場合は腹圧性尿失禁の治療を、また「突然の尿意で“ドーッ”ともれてしまうほうが深刻」という場合は切迫性尿失禁の治療を中心に行うのです。

このため、医師を受診するときは「どのような症状が、どの程度あって、より困っているのはどちらか?」を、きちんと医師に伝えることが大切になってきます。

まずは骨盤底筋体操で改善を図りましょう。どちらのタイプにも有効です。切迫性尿失禁の症状が強い人は、併せて膀胱(ぼうこう)訓練と薬物療法を行います。膀胱の過剰収縮を抑える抗コリン薬やβ(ベータ)3作動薬が有効です。手術を希望する人もいますが、腹圧性尿失禁は改善しても、切迫性の部分は残ってしまいますので注意が必要です。

腹圧性尿失禁の症状が強く出て困っている人は、以前説明した「TVT」や「TOT」といった手術も、選択肢の1つになります。これらの手術は尿道と膣(ちつ)壁の間に、幅1センチほどのメッシュ状のテープを挿入し、尿道の中ほどを支えるものです。腹圧がかかると尿道が開かないようにテープが支え、尿失禁を防ぐ仕組みになっています。これらの手術で腹圧性尿失禁だけでなく、切迫性尿失禁も約6割の方が改善します。最近の調査によると、TVT手術後17年の成績が報告され、腹圧性尿失禁の治癒および改善が「87%」と、長期成績も優れている報告がなされています。