■コロナ鬱(うつ)を防げ

北里大学の研究によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、国民の社会的活動の抑制が広がり、調査対象者2708人のうち18・35%が、うつ病という結果になりました。

ぼくの外来でも、コロナ不安に直面している人がいます。

「夜眠れず何を食べてもおいしくない。コロナの症状に味覚や嗅覚が落ちるというのがあるので、もしかしたらコロナにかかってしまったのかもしれません」

そこで実際に花の匂いを嗅いでもらうと、ちゃんとわかる。味覚についても、コロナへの不安から食欲が落ち、おいしく感じられなくなっていたのです。

じっくり話を聞いているうちに、こんがらがった糸が解きほぐされて、表情も和らいでいきました。

■周りを気にかける

「離れて会えない友人やお孫さんに電話して、自分の心配よりむしろ、相手を心配してあげたらいいね」と勧めました。人に優しくすると、自分の中にオキシトシンという愛情ホルモンが出て、元気になるのです。

次の外来では随分明るくなっていました。「人を心配して声をかけたり、電話で様子を気遣ったりしているうちに、自分の方がどんどん大丈夫という気持ちになってきました」。

心が不安になったとき、同じ思いをしている人は他にもきっといます。自分の不安な気持ちにしがみつかず、人を思いやり気遣う行動をとることで、自分の不安が少し軽くなっていくことが分かります。