何という結末か。「M1」の阪神はデーゲームで広島に逆転負けを食らった。しかしナイターで巨人もDeNAに逆転負けを喫する。この瞬間、初のリーグ連覇が決まった。巨人とデッドヒートを繰り広げた今季を象徴する幕切れだ。
昨季に比べても指揮官の顔に笑顔が少なかったシーズンかもしれない。すでに10月。ここまで決定が長くなったのも近年ではめずらしい。特にセ・リーグでは。それもあり、連覇を達成した監督・藤川球児にシビアな声も多いようだ。
「これだけの戦力があって、なんでこうなるんだ」「岡本和真の抜けた巨人になぜここまで追われるのか」。そんな声が解説者や虎党の間にもあったと思う。このコラムでも時々、厳しいことを書いてきた。
阪神の監督は難しいし、厳しい職務だ。勝てばもてはやされるが、負ければ現役時代にあれだけ送られた声援とは裏返しの批判が来る。取材でいろいろな野球関係者に接するが、そこで受ける印象は「誰もやりたがらない仕事」ということだ。当然、球児も就任前はそれを予想していたと思う。それでも彼の場合は“経験”があった。今季のある場面、自分自身で語ったのはこういうことだ。
「僕のときは毎日、負けたら(報道は)『球児、打たれた!』ですよ。今もいっしょでしょ。負けたら僕が1面で。勝ったら佐藤(輝明)とか、みんな(の記事)で。それは狙っていることなんです。狙い通りなんです」
負ければ指揮官の責任…ということを自分に言い聞かせてきたのだろう。それでも「監督の責任でも何でもいいですけど」などと、ポロリ、悔しさから口走ったこともあった。それでもここまでやり続けたのは強い思いがあるからだ。「恩返しですから」。球児は監督を続けるモチベーションについて、そう話したものだ。期待されていなかったドラフト1位入団からクローザーに成長。大リーグにも挑戦できた。独立リーグも経験し、最後が阪神のスターとして現役を終えることができたのである。
そして監督。すべては阪神の選手だったからだ。球児はそのことに誰よりも強い思いを持っている。「球団初のリーグ連覇監督」という栄誉に輝くことができたのは、その思いに対し、野球の神様が応えたからではないか。そう思っている。連覇が決まった後、球児は泣いた。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




