「オーナー報告」。この業界の慣例だ。今季の区切りがついた時点で監督がオーナーにあいさつに出向く。前日17日、CSファイナル4連敗で今年を終えた指揮官・藤川球児も、この日、それに臨んだのである。

記者会見でいつものように雄弁に語った球児だ。敗退の昨夜、ほんの少しだけ彼とコミュニケーションを取った。相当、落ち込んでいる様子を感じたのだ。それだけにこの日のスッキリした表情にホッとしたと言えばそうだし、どうしたのかなという印象も受けた。どう切り替えたのか。

「常に覚悟は持ってやっていますから。家に帰って、奥さんと話して。奥さんに『よく頑張ってくれてありがとう』と言ったことで、なんか、ちょっとホッとしたというか。それは大きかったですね」

球児は鍋料理を好む。ナイターが終わり、深夜に帰宅してもその用意ができている。すでに食事を終えている妻だが球児のために横についてくれるという。球児は常々、それに感謝する。缶ビールを半分だけ飲んでの語らいが自分を救ったのかもしれない。

もう一つ、聞いておきたいことがあった。この世界にいる人間として、いつも不思議に思うのは連日、取材している我々がまったく知らないことが一部のネット記事やSNSで飛び交う状況だ。「球児が今季で辞任する」というのも、その一つかもしれない。

辞めようと思わなかったか。そう聞いてみた。即答したのは「いつも思いますよ」という言葉だ。阪神の監督が激務なのはこの世界では知られた話。成功しても失敗してもすべての虎党には満足してもらえない。注目度の高さがそうさせるのだが、その心労は想像を絶する。

「いつも思う…」に続けたのはこういうことだ。「冷静に考えたら、それは違う。そういう発想だったら絶対に勝てない。心が簡単に折れるようなら導けるものも導けない。勝負師としての気持ちは必要だけど投げ出すようなことはしてはいけない」。自分に言い聞かせるように語ったのだ。

来季は3年契約の3年目だ。結果次第では再契約もあるかもしれないが“契約満了”もあり得る。課題は山積だ。それでも目指すのはセ・リーグでは巨人、広島だけが達成した「リーグ3連覇」なのは間違いない。CS突破も日本一も、その先にあること。終わらない戦いは続く。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

オーナーへ今シーズンの報告を行い粟井一夫球団社長(左)とともに会見する阪神藤川球児監督(撮影・加藤哉)
オーナーへ今シーズンの報告を行い粟井一夫球団社長(左)とともに会見する阪神藤川球児監督(撮影・加藤哉)