【ヒューストン(米テキサス州)12日(日本時間13日)=四竈衛】ア・リーグ優勝決定シリーズが開幕し、10年ぶりのワールドシリーズ進出を目指すヤンキースがアストロズに快勝し、会心のスタートを切った。先発田中将大投手(30)が、6回1安打無失点。二塁を踏ませない完璧な投球で、大舞台での強さを見せつけた。第2戦は13日(同14日午前9時8分開始予定)に同地で行われる。

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超満員の敵地スタンドを沈黙させる快感は、格別だった。研ぎ澄まされた田中の集中力は、役目を終えるまで途切れなかった。68球で6回無失点。許した2走者も併殺で切り抜け、二塁すら踏ませなかった。米国でも大舞台に強いとの評判が定着した田中の、ポストシーズン防御率は1・32。重圧を乗り越える精神力こそ、田中の真骨頂だった。「数字が残っているので、それを言われるのも分かるんですけど、何より喜びというのは、試合に勝った、自分の持っているものを出し切った、試合後のそういうところだけです」。

会見ではサラリと振り返ったが、マウンド上では慎重かつ冷静だった。「緊張しました、今日も。だけど、それがマイナスに働いたとは思わないです」。相手のア軍は、配球、球種別のクセ、サイン盗みも含め、豊富なデータ分析を基に徹底的に狙い球を絞り込んでくる。だからこそ、周到な準備を進め、相手のデータにない頭脳戦を挑んだ。1回、先頭のスプリンガーに対し、カウント2-2から内角高めの148キロの速球で二ゴロに仕留めた。公式戦中の、追い込んでからは変化球、のイメージを逆手に取る凡打。相手を「?」と疑心暗鬼にさせるのに十分な1球だった。

バッテリー間の動きにも工夫を凝らした。捕手サンチェスが内角高めに構え、釣り球を要求すると見せかけて外角低めにスライダー、フォークを投げ分けた。5回には自らブロックサインを出すなど、サイン交換にもバリエーションを加えた。それらの意図について「そこは言えないですよ」と笑った一方「すべて今日はうまくいってくれた。いい集中力で投げられたと思います」と言えるほど、会心の18アウトだった。

最大の難関と思われた敵地初戦で快勝。「いい野球ができていると思う。次にマウンドへ上がる時までにしっかり準備したいと思います」。ヤ軍にとって10年ぶり、田中にとって初のワールドシリーズへ、文句なしのスタートを切った。