今季のヤクルト山田哲人内野手(28)はビジターで打率3割3分6厘。規定打席到達者の中では村上(ヤクルト)の3割4分9厘に次ぐリーグ2位の高打率で、敵地ゲームは9月9日広島戦から10試合連続で安打を記録中。

ビジターに強い山田哲。ハマスタで確実とした16年、2度目のトリプルスリーを復刻記事でどうぞ! (所属、年齢など当時)

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<DeNA6-1ヤクルト>◇16年9月6日◇横浜

ヤクルト山田哲人内野手(24)が6日、DeNA19回戦(横浜)の初回2死から、今季30個目の盗塁を決めた。昨季に続いてトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)の条件を現時点で満たした。山田を含め、過去10人が記録しているが、2年連続となればプロ野球史上初の快挙。試合には敗れたものの、9回には意地の34号ソロをマーク。前人未到の領域が目前と迫った。

ほんの数秒。塁上で、勝負は決まった。一塁走者の山田は、DeNA先発・井納の動きが目についた。「ホームベースの方向に向いている感じ」。けん制はない、と踏んだ。両手を両膝につけ、二塁方向・右足側に重心を置いた。次打者・バレンティンの初球。低重心のままスタートを切り、右足で二塁にスライディング。余裕のタイミングで、今季30個目の盗塁を成功させた。

少しの足踏みを経た。8月26日阪神戦(甲子園)で1試合2個の盗塁を記録してから遠ざかった。8月には左第8肋骨(ろっこつ)骨挫傷で、プロ入り後、初の故障による登録抹消。以前から痛める腰、右大腿(だいたい)裏の状態も芳しくない。相手からの執拗(しつよう)なマーク。その中で「いつでも行く気はあるのに、バレンティンが打っちゃうから」と、ジョークを口にするほど、心の余裕は持ち続けた。9回には8月7日阪神戦(神宮)以来の34号ソロ。「打」「走」で妥協することはなかった。

「リード、帰塁、偽走。盗塁ってしんどい」と言いながら、なぜ走り続けられたのか-。

「誰かと同じでは、本当の一流とは言えない」

この言葉を胸に刻んでいた。今季の目標に「2年連続トリプルスリー達成」を設定。今春キャンプでは、「誰もやったことのないことを自分がやりたい。ゴールデングラブ賞も取りたい」と力強く言い切った。きっかけは、三木ヘッドコーチの言葉だった。

三木コーチ 打って走れる選手は、たくさんいる。打って、走って、守れる選手はそうそういない。その先を目指そう。誰タイプでもない、山田哲人を。

前人未到の領域を追い求めていた。山田は「盗塁だって、守備だって考えることが多すぎて、正直しんどい。でもそれをできた方がかっこいいでしょ」。本塁打部門に続き、盗塁部門もクリア。残すは打率3割キープだけとなった。「もっとホッとするのかな、と思ったけどそうでもないですね。まだ試合はあるし、これからも走り続けたい」。唯一無二の存在になるべく、歩みを止めない。【栗田尚樹】