まっさらなロジンに、ゆっくりと手を置く。ルーティンを終えた阪神西勇輝投手(35)は、こみあげる思いを我慢できなかった。赤くなった目を何度も両手で拭うと、ふーっと一息。「これで最後なんだなと思いながら、1球目を投げるのが遅くなっていました」。プロ18年間見せ続けた、戦う顔に戻った。
引退試合でNPB歴代単独2位となる307試合連続先発を達成。「まっさらなマウンドに自分が最初に上がるという気持ちは、10何年間続けてきたことだった。その思いをかみしめながら丁寧に投げていこうと思って投げました」。武器にしてきた緩急で、12球で3者凡退に抑えると、惜しむように2回もマウンドへ。最後に向かい合った、広島坂倉を空振り三振に打ち取ったのは宝刀シュート。3者連続三振で、1回1/3を無安打無失点。最速140キロ。まだまだ、腕を振れそうだった。
08年ドラフト3位でオリックスに入団。19年からタテジマのユニホームで、通算127勝を挙げた。「この景色、僕は一生忘れません」。プロ初勝利も甲子園。思い出の詰まった聖地を目に焼き付けた。
でも、役目はまだ残っている。「明日練習するよ。普通にCSと日本シリーズの予備(メンバー)に入る可能性もある」。ラストマウンドは、もう少し先かもしれない。
〇…引退セレモニーに、ゆかりの関係者が温かいメッセージを寄せた。ドジャース山本の登場に、甲子園もどよめき。山本は「僕が高卒でプロに入ったので、何もわかっていない中、プロ野球選手としてのマナーというか、ローテーションピッチャーとしてのこと、とにかくたくさん西さんには教わった記憶がたくさんあります。本当にありがとうございました」と感謝の思いを伝えた。楽天前田はメジャーの習慣にならい「引退おめでとう」とねぎらい。オリックス岸田監督や森脇元監督、若月、楽天伊藤らも思いを伝えた。



