横綱大の里の涙の復活優勝を、土俵下の審判として見守った師匠の二所ノ関親方(40=元横綱稀勢の里)は、対照的に満面の笑みで祝福した。現役時代、白鵬らと常に、レベルの高い優勝争いを繰り広げた同親方は、常々「(本当の)優勝は13勝以上だぞ」と、大の里に言ってきた。それだけに6度目の優勝を12勝で飾ったまな弟子に、星の数こそ物足りなさを口にしたが「今日ぐらいは褒めてあげてもいいのかな」と、隠しきれない笑顔で話した。

弟子の復活を信じ続けた1年間だった。出世の早さに髪の伸びが追いつかず、まげの結えない、ちょんまげのまま大関に昇進。師匠は「それまでの相撲人生、自分で考えたことがないぐらい勢いだけできたところがあったと思う」と振り返った。ただ、対戦を重ねるごとに、相手にも研究されて、得意としていた相手にも敗れるようになった。

今場所も13日目に、取組前まで10勝1敗と、対戦成績で圧倒していた大関霧島に敗れると、翌14日目も大関琴桜に敗れて連敗。それでも師匠は「いつも以上の力を出そうとしていて『らしくない』相撲」と、優勝への焦りを乗り越えれば、実力は十分と信じ抜いた。

優勝決定後、報道陣に対して開口一番「よく立て直してくれた」とたたえた。自身も師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)から、自ら考え、気付くことが成長になると教わった。大の里は昨年九州場所の左肩のけがを言い訳せず「見えないところでも(トレーニングなどを)やっていると知っていた。『強くなる』という気持ちでやっていた」と弟子の変化に気付いていた。

だから師匠も小手先の技術的な助言はせず、復活を信じた。9勝6敗だった先場所も、安易に途中休場させなかった。「悔しさも恥ずかしさもあったと思う。それが今場所の糧になった」。師弟で壁を乗り越えた優勝でもあった。【高田文太】