政界地獄耳

皇室と安倍政権との確執/政界地獄耳

★「『平成の天皇』論」(講談社現代新書)を上梓した毎日新聞編集委員兼論説委員・伊藤智永は同書の冒頭で「平成の天皇は思想家だった。天皇は、ただ『ある』のではない、象徴に『なる』のであるという思想を創造した」と記している。また、皇室と安倍政権の中核との確執にも詳しく触れている。その伊藤が「月刊日本6月号」でインタビューに答えているが、その内容が衝撃的だ。

★16年7月13日。自公連立与党が参院選勝利に沸く3日後、NHKが「天皇陛下 生前退位のご意向」をスクープする。「退位の希望は2年前の秋には宮内庁から官邸にはっきり伝えられていたが、官邸は現行法通り摂政でかわすよう言い含めて頬かむりしていた。消費税引き上げ再延期や衆参同日選を狙うといった政局にかまけて『天皇どころじゃなかった』(政府高官)というのだ」(第2章 退位政局は続くより)。

★その前後について伊藤はこう話している。「麻生副総理は派閥議員たちを前に『退位なんてワガママだ。今の陛下はあいさつも読み間違えるし、判断力が弱ってるんじゃないか』と放言したともいいます。安倍首相、麻生氏、菅氏らには皇室に対する畏れがない。政権のナンバー1、2、3がそういう人物であれば、皇室に関わる物事が政権の都合で進んでいくのは当然です。皇室とは何か、どうあるべきかなどそもそも考えていないのでしょう。安倍政権の対応について皇室関係者が杉田官房副長官に抗議した際、杉田氏が思わず『いや、退位に反対とかいうことはありません。総理は本質的に天皇や皇室に関心がないんですから』と漏らしたので、あきれて絶句したそうです」。

★この衝撃を物言えぬ皇室はどう受け止めているのだろう。上皇が皇室とは、象徴とは何かと問うている間、官邸は譲位を退位と変え、政権の浮揚策に塗り替えたのだろうか。国民には多くの疑問符が浮上したといえる。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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