間もなく梅雨に突入。世間的にはあまりうれしくない時季だが、釣り人にとっては「梅雨グレ(メジナ)」「梅雨イサキ」の季節となる。静岡・石廊崎で「小赤島」「陸の丸島」などさまざまなポイントへの渡船を行う日刊スポーツ共栄会「橋本屋」(山本一人船長=50)で、ひと足先にメジナ&イサキにチャレンジする常連客3人に密着した。この日はサバの猛攻に悩まされつつも、3人でメジナ5匹、イサキ1匹の結果を出した。

「橋本屋さんには、もう15年は通っています」という山木隆男さん(59)だが、「正直言うと、この時季はもうサバが湧いていて、メジナは厳しいんです。それでも、来ちゃうんですけどね」と笑った。山木さんの釣り仲間、佐藤正樹さん(58)松平光央さん(49)は、山木さんを“組長”とする山木組のメンバーだ。

この日、まず勝負に選んだのは「小赤島」。上陸するなり島の南先端部をのぞき込んだ山木さんの口から「いるな~!」の言葉が漏れた。まき餌を打つ前から小さなサバの群れが湧いていた。「やる気なくなるな~」と苦笑。「他の餌取りはある程度まき餌でかわせるけど、サバはダメ。ウキのポチャという音でも寄ってくる。やつらはとにかく速いですから」。島の東側に松平さん、西側に佐藤さんでスタート。佐藤さんの第1投目には、小さなサバが付いていた。

ルアーで様子見していた山木さんはオキアミフカセに変更。するといきなり本命のメジナがヒット。「来たけど、小さいな~」。30センチ弱だったが、石廊崎のローカルルール「30センチ以下はリリース」に乗っ取りリリース。その数分後にもヒットするが、これはさらに小型で再びリリース。その約5分後には佐藤さんのサオにもメジナがかかるが、これも型が小さくリリースとなった。

その後は“サバ”タイム。松平さんは「少しでも速く餌が落ちるように、針のすぐ上にガン玉を打ってみます」。この作戦が当たった。松平さんのサオが放物線を描くが無情にもバレた。「アワセがちょっと遅れてしまいました」と悔しがった。「ジャマしちゃうよ!」。そう言うと、松平さんの横で山木さんがサオを出す。数回投入すると、ウキが一気に沈む。ビシッ! すぐさまアワセると、見事良型のイサキを釣り上げた。

その後もサバの猛攻が続き「もう沖まで投げてもサバ。浅場も深場も全域サバで、これではやりようがない」と山木さん。釣れたサバを泳がせてヒラスズキを狙ってみるが、「ヒラスズキはもっとサラシ(白波)が立ってないとダメなんだけどね」。結果は根魚にかじられたサバを、サバの群れが突っ付いて終わった。

「小赤島」に見切りを付けポイント移動。この日は風が強く「沖の丸島がオススメですが、条件が悪いので陸の丸島にします」と山本船長。同ポイントで誰よりも先にサオを出した山木さんがメジナを掛けるが、これもリリースサイズだった。「ここはスズメダイにチョウチョウウオ、そしてサバもいますからね…」という松平さんは、1度メジナを沖に誘うまき餌を打ち、その後足元にまき餌をまいて、浅場に餌取りを集めてから仕掛けを投入。ここでも針の上にガン玉を打ち、餌持ちがいい練り餌で勝負していた。やがてサオがグンとしなるが、魚が根に入ってしまいラインブレークに終わった。

結局この日の釣果は「小赤島」でメジナ4匹&イサキ1匹、「陸の丸島」でメジナ1匹だが、メジナは全てリリースサイズ。だが、大型バレも数回あり、気配は感じられた。「いいところを見せたかったけどダメでした(笑い)。でも、仲間でワイワイできるのも磯釣りの魅力ですから」と話す山木さんに佐藤さん、松平さんも大きくうなずいた。

山本船長は「今日はサバが多すぎでしたね。すみません」と笑いながら謝罪。「小サバが散れば、メジナ、イサキ等が期待できます。サバを使った泳がせも楽しめると思います」とし、「夜釣りも始まったので、こちらも楽しんでください」とアピールした。【川田和博】

■ライフジャケットなど着用を

磯釣りには歩いて渡れる地磯と船で渡る沖磯があるが、いずれの場合も、ライフジャケットと磯用スパイクシューズもしくはブーツの着用が義務付けられている。ライフジャケットは船釣り用よりもより浮力の高い磯専用を着用しよう。また、釣り座をまき餌で汚した場合は釣り人のマナーとして、海水等できれいに洗い流してから帰ろう!

<山本さんのアドバイス>

「橋本屋」歴15年の山木さんに磯釣りの基本的な釣り方を聞いた。

▼まき餌 粉末状の配合餌にオキアミ等を混ぜたもの。「本命を寄せる」「餌取りをかわす」ほか、「潮の流れを見る」などの意味がある。その意味によってまき方も変わるが、基本的にまき過ぎ厳禁。

▼基本的な仕掛けの投入方法 魚は潮の流れに向かって泳ぐため、仕掛けを投入したらサオを潮上に傾け、餌が(狙う魚に対して)先行する形を作る。

▼つけ餌の選定 軟らかめのオキアミ、中間のボイル、やや硬めのむき身、硬めの練り餌などがある。基本は、活性が低い場合は軟らかくて食い込みがいいもの、活性が高い場合は硬く餌持ちがいいものがいい。

◆船宿「橋本屋」 【電話】0558・65・0108。集合午前4時半、出船午前5時(7月14日まで)、磯あがり午後2時。ポイント移動は海況等により応相談。現在、主にイサキ狙いの夜釣りも可能。集合午後2時半、出船午後3時で磯あがり明朝日の出ころ。ともに渡船料金は5000円。※詳細は必ず電話でご確認ください。