戦後80年、右肩上がりに国内死因数を伸ばした病気は「がん」。年間38万人以上の命を奪い、死因第1位の肺がんでは約7万5600人が亡くなっている。そんな肺がんを上回る死亡数となっている病気がある。「肺炎」だ。

ウイルスや細菌などで肺に炎症が起こり、重症化すると呼吸不全や痰(たん)による窒息などで肺炎は命を脅かし、年間8万人以上が国内で亡くなっている。誤って食べ物などが気道へ侵入して肺に到達し、炎症を起こす「誤嚥(ごえん)性肺炎」によっても、年間約6万3700人が命を奪われている(厚労省2024年「人口動態統計」)。肺炎と誤嚥(ごえん)性肺炎で年間死亡者数が14万人以上の脅威になっているのだ。

「肺炎も誤嚥性肺炎も高齢者で急増し、社会問題として捉えるべき課題といえます。高齢者は免疫力が低下しやすく、ウイルスや細菌などの肺に入った異物を排除する力が弱いのです。高齢者のみならずそのご家族にも、ぜひ予防の重要性を知っていただきたいと思います」と、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸ケアリハビリセンター副センター長の菅原玲子医師は話す。

今年6月には「ミスタープロ野球」と称された長嶋茂雄さんが肺炎により89歳で亡くなった。8月に訃報が報じられた日本サッカー界のレジェンド釜本邦茂さんは81歳で誤嚥性肺炎により倒れた。9月には、ビリーバンバンの歌手・菅原孝さんも81歳で誤嚥性肺炎で他界した。

「ご高齢の場合、肺炎の治療を適切に行っても、体力の低下が速く身体状態が急激に悪化することもあります。予防を心がけましょう」と菅原医師は話す。