「夏冬二刀流の鉄人」が冬季パラリンピックに初挑戦する。リオデジャネイロ・パラリンピック陸上男子走り幅跳び(切断などT42)銀メダルの山本篤(35=新日本住設)はスノーボード2種目に出場し、雪上で戦い抜くことを誓った。夏冬計4回目の大舞台。「陸上とは違う緊張感がある。こういう希少価値は好き。経験と実力不足でメダルは難しいので入賞を目指す」と静かに胸を高鳴らせた。

 中1でスノーボードを始めた。高2のバイク事故で左脚を切断したが、手術の半年後には再開した。一時期は年間40日、山ごもりするほど熱中した。リオ大会後の昨年1月に平昌大会への挑戦を決意。しかし、義足の使い方やターン技術など世界トップ選手との差は歴然で、国際大会で表彰台に立つことはなかった。今大会は国際パラリンピック委員会(IPC)の招待枠を得て代表入り。「戦わないと始まらないし、チャンスはものにしたい。運も味方にする」と、勝負師らしく力強く言った。

 昨年10月、スズキを退社してプロ選手に転向した。「結果が全て」という信念のもと、後輩らに人生の道しるべを示すためでもあった。今日7日には第1子が誕生予定。35歳のベテランは父として勝負に出る覚悟だ。【峯岸佑樹】

 ◆山本篤(やまもと・あつし)1982年(昭57)4月19日、静岡県掛川市生まれ。掛川西高-大体大-大体大大学院。高校卒業後に陸上を始める。夏季パラリンピックは08年北京から3大会連続出場し、12年ロンドン大会走り幅跳び銀メダル。16年リオ大会走り幅跳び銀、400メートルリレー銅。スノーボードは17年9月のニュージーランドW杯6位。趣味はゴルフ。167センチ、60キロ。