日本のエース森井大輝(37=トヨタ自動車)が、悲願の金メダルにまた一歩届かなかった。

 出場26選手中2番目の滑走で1分25秒75の好タイムをマークしたが、8番目に登場したキャーカ(米国)が1分24秒11。1秒64及ばずに銀メダルに終わった。

 森井の表情は複雑だった。「悔しいです。ただ、ホッとしているところもあります。形に残るものができたので、それは良かった」。高速系から技術系までを世界のトップレベルでこなすオールラウンダー。W杯では日本選手初の2季連続を含む3度の総合優勝を誇る。ただ、本人が「僕のキャリアで足りないものはパラリンピックの金メダル」と言うように、4年に1度の冬の祭典では頂点に立ったことがない。

 21歳で初出場した02年ソルトレークシティー大会から今回で5大会連続出場になる。06年トリノ大会の大回転銀を皮切りに10年バンクーバー大会で滑降銀、スーパー大回転銅、14年ソチ大会ではスーパー大回転で銀。「シルバーコレクター」のニックネームよろしく、平昌での初レースで4つめ銀メダルを手にすることになった。

 ソチ大会後にトヨタ自動車に移籍した。同社の風洞実験施設を利用してチェアスキーの改良にも取り組み、足の部分を包み込むカウル(風よけ)の形状にもこだわってきた。「心技体に加えてギアまで、すべてをそろえなければ勝てない」と万全を期して今大会に臨んでいる。

 急斜面が少なく、片斜面やうねりが多いコースはチェアスキーにとって簡単ではない。そのコースで1年前に行われたプレ大会のW杯で滑降を制覇。「僕のテクニックが最大限に発揮できる」と好感触を得ていたコースでもある。7日の公式練習では5番目のタイムにとどまったが、持ち味の技術と修正能力は発揮した。

 「今後の4つレースで攻めて、もう1つ上のきれいな色のメダルを取りたい」と森井。まだまだチャンスは残っている。まずは11日のスーパー大回転で再び、金メダルに挑戦する。

 ◆森井大輝(もりい・たいき)1980年(昭55)7月9日、東京都あきる野市生まれ。16歳の時、バイク事故で脊椎を損傷して車いす生活になる。98年長野大会を病室でテレビ観戦し、大日方邦子(平昌大会日本選手団長)らの競技に感動してスキーを始めた。W杯で11-12年、15-16年、16-17年シーズンの座位総合王者。171センチ、63キロ。