日本勢の表彰台独占も期待されたが、メダル獲得はならなかった。3連覇を狙った狩野亮(31=マルハン)は5位、10日の滑降で銀メダルの森井大輝(37=トヨタ自動車)は8位、鈴木猛史(29=KYB)は13位、夏目堅司(44=RDS)は途中棄権に終わった。

 「正直、悔しい気持ちと、これまで支えてくださった方々にいいところを見せられなくて申し訳ない気持ちでいっぱいです」。狩野は表情を変えることなくインタビューに応じた。2番目のスタートで中盤までは荒れ気味のコースを巧みに攻略していたが、終盤のターンで大きく膨らんでタイムロス。コースセッティングも「僕にとっては難しく、うまくこなせなかった」と振り返った。日本座位陣が誇る高速系のエースは、滑降で2連覇、この日は3連覇を狙ったが表彰台にも上がれなかった。

 滑降で4大会連続銀メダルを獲得し、悲願の金メダルを目指した森井は、スタート直後の急斜面でリズムに乗れなかったのが響いた。中盤の緩斜面でも何度かスキーが暴れるように跳ねるのを抑えられず「ラインを外して、それを取り返そうとしたが、最後まで自分の滑りが、攻めることができなかった」と敗因を分析した。1、2番目スタートの鈴木、狩野が好タイムで海外勢にプレッシャーをかけ、15番目の森井が追いかけるという日本の戦略も不発。10年バンクーバー、14年ソチの2大会で金4、銀2、銅4のメダルを獲得してきた3人が、2種目を終えて森井の銀だけにとどまっている。

 海外勢は人工雪、荒れ気味のコース、気温上昇による雪質の変化などを克服して好タイムをマークしている。パワーに加えて技術、ギアの進化も著しい。世界のチェアスキー界の頂点に君臨してきた日本に迫り、追い越しつつある。「もう1度つくり直して出直さなければ、パラリンピックの舞台ではトップは取れないと思う」と狩野。森井も「海外勢はすごく速くなっている。いろいろな部分で調整と改善を重ねていかないといけない」と勢力図が変わりつつあることを認めた。

 アルペン競技は今後、大回転、回転の技術系に移っていく。オールラウンダーの森井、回転で2連覇を目指す鈴木、複合では狩野にも十分にチャンスはある。「ハート、気持ちを強く持って次のレースへ向けて頑張りたい」。鈴木がチームメートを鼓舞するように言葉に力を込めた。