金メダルを期待された成田緑夢(ぐりむ、24=近畿医療専門学校)は、惜しくて悔しい銅メダルに終わった。

 3位決定戦で14年ソチ大会金メダルのストロング(米国)と対戦。スタートからリードを奪ってプレッシャーをかけ、中盤で相手がコースアウトしてからは独走で逃げ切ってスノーボード競技では日本初のメダルを確保した。

 悔やまれるのは準々決勝、ソチ大会銅メダルのガベル(米国)とのレースだった。スタート直後のウエーブと呼ばれるコブを越えたところでリードし、さらに差を広げかけた中盤のバンクで転倒、逆転を許した。予選を出場20選手中トップのタイムで通過し、決勝トーナメント1回戦、準々決勝も圧勝していただけに惜しかった。

 それでも成田は「シンプルにうれしい。常に挑戦をやめないという目標はクリアした」と満面の笑み。「前回のメダリストや昨季のシリーズ王者が勢ぞろいした中で勝ち上がれたのは、トップ選手と争えた証拠だと思う」とコメントに充実感をにじませた。

 すでにW杯総合優勝を決め、世界ランクも1位に立っている。陸上短距離、走り幅・高跳びでも日本のトップレベルで活躍する高い運動能力に加え、今季からギアにも工夫を加えた。13年にトランポリンの練習中の事故で、左足の膝下がまひする障害を負った。その左足を前にするレギュラースタンス。膝下から硬い材質のブーツで固め、後ろの右足には軟らかいブーツを履く。苦手だったターンを向上させ、どんなコースにも雪質にも対応できるコントロール性を追い求めた結果だった。

 「メダルの色がほしいわけじゃない。影響力がほしい」が口癖だ。「人に夢、感動、希望を与えるのが僕の人生のゴール」とも言う。ただ、金メダルを取れば、影響力も感動もより大きくなる。16日のバンクドスラロームでもう1度、頂点にアタックする。

 ◆成田緑夢(なりた・ぐりむ)1994年(平6)2月1日、大阪市生まれ。フリースタイルスキーHPでは13年の世界選手権9位、世界ジュニア選手権優勝。パラアスリートとしては陸上にも励み、昨年6月の日本パラ陸上選手権では走り幅跳び(T44クラス)で準優勝。兄童夢(どうむ)姉今井メロは06年トリノ五輪スノーボードHP代表。172センチ、63キロ。