松井秀喜の指導論〈1〉マイナーの現場から~ジャッジ、オースティン…次々と大砲輩出

DeNAでプレーするタイラー・オースティンと、現役メジャー屈指の強打者、アーロン・ジャッジ。2人は、ヤンキース時代の6年前に「デビュー戦初打席、初本塁打の連発」という離れ業をやってのけました。共通点は松井秀喜。同時期にマイナーで指導を受け、そろって昇格した直後、史上初の記録を達成したのです。(2016年11月1日掲載。所属、年齢などは当時)

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★「こんなにみんなが」

巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(42)が、今季もヤンキースのGM特別アドバイザーとして傘下マイナー選手の巡回指導を行った。今後、日本でも指導者としてユニホームを着るのかは分からないが、松井氏が理想に抱く「指導論」とは―。特別インタビューを5回に分けてお伝えします。

12年の現役引退後、今も米ニューヨークに居を構える松井氏は、今季もヤンキースの一員として多忙な生活を送った。

2月はキャンプ地タンパで臨時コーチを務め、開幕後は1カ月の半分以上で3Aスクラントン、2Aトレントン、1Aスタテンアイランドへ足を運び「巡回コーチ」として若手の育成に尽力した。

くしくも今季のヤンキースは、ロドリゲス、テシェイラの両内野手の引退に伴い、若手との世代交代を積極的に進めた。

一躍脚光を浴びたサンチェス捕手をはじめ、ジャッジ外野手、オースティン内野手ら、将来のヤ軍を担う有望株が、初昇格を果たした。

「いい意味で、予想を裏切ってくれた。今年こんなにみんながすぐにメジャーに行くとは思わなかった。チームが方向転換したから、そういう意味では自分の立場としてはうれしいことですね」

若手の成長を見守る立場としても「過渡期」を迎えたチームの未来志向的な空気は好材料だった。

「この2年くらいしか知らないですけど、少なくともよくありがちな、俺たちが頑張っても上がれないとか、トレードに出されるんじゃないかとか、そういう雰囲気は一切感じなかったですね。そういう意味では、みんなその時に備えてやっているような意識は感じました」

特に8月の再昇格後に、わずか52試合で20本塁打を量産したサンチェスの活躍は、ファンだけでなく、ヤ軍全体にも大きなインパクトを与えた。もっとも松井氏自身は、目先の結果だけでなく、中長期的な視点で若き大砲を見守っていた。

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四竈衛Mamoru Shikama

Nagasaki

長崎県出身、米アリゾナ在住。北関東支局(群馬・栃木)を経て、巨人、ヤクルトなどを取材。1999年からメジャー担当。趣味は料理とゴルフ。