松井秀喜の指導論〈3〉マイナーの現場から~張本勲提唱の「すり足」をかたくなに拒否

マイナーリーガーを導く上で、松井秀喜コーチが重視する点は。貴重な指導論の第3回です。(2016年11月3日掲載。所属、年齢などは当時)

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★繰り返した「自分で」

ヤンキースでマイナーの巡回コーチを務めている松井秀喜氏(42)にとって、理想の「コーチ像」はあるのだろうか。若手育成には、指導内容だけでなく、タイミングも重要。現在、何を感じ、将来どのような指導者の道を歩むのだろうか。

現役時代、常に本塁打を期待された松井氏は、オフも黙々とバットを振り続け、日米両国で通算507本塁打を積み重ねた。

その間、少年時代の指導者をはじめ、プロ入り後も多くのコーチから技術的な指導を受けてきた。育成する立場となった今、指導の原点に目を向ける。

「指導するタイミング、時期というよりも、質だと思うんですよね。ただ、まず正しい打ち方は何なのかをある程度知った上で、自分で作り上げてほしい。何でも他人に聞いてやるのではなくて、ある程度の正しい打ち方、正しいと信じられているものを。それを伝えたあとは、自分で作り上げていくものだと思っています」

打撃フォームは、各選手で違い、しかもプロで実績を残した選手でさえ、常に変わっていく。つまり、完璧な答えはない。だからこそ、打撃の基本形を理解し、体に染み込ませた上で、模索していくしかない。

「コーチといっても、いろんなことを言うコーチがいるし、コーチによって違うケースもある。そうなると、自分が作り上げたものの中にエッセンスとして入れるのはいいと思いますが、そこで初めて対応できるものだと思います」

松井氏自身、プロ1年目の宮崎キャンプで張本勲氏から「すり足打法」を指導されたが、「僕には合わない」と取り入れなかった。

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四竈衛Mamoru Shikama

Nagasaki

長崎県出身、米アリゾナ在住。北関東支局(群馬・栃木)を経て、巨人、ヤクルトなどを取材。1999年からメジャー担当。趣味は料理とゴルフ。