松井秀喜の指導論〈2〉マイナーの現場から~「コイツはいけるとか言うつもりはない」

松井秀喜を表現する言葉の代表格が「不動心」。周囲に流されることなく技術を積み上げ、極めてきました。マイナーリーグでの指導哲学にも、その一端を垣間見ることができます。(2016年11月2日掲載。所属、年齢などは当時)

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★フラットに徹する

ヤンキースで「巡回コーチ」を務める松井秀喜氏(42)は、どのような視点で選手を見つめているのだろうか。ここ数年は、古巣巨人の宮崎春季キャンプで特別指導する機会もあった。指導における信条とは―。

松井氏は、実績のあるベテランに細かい技術指導をするつもりはない。ただ、若い選手の場合、素質がありながら伸び悩むこともあれば、短期間で「大化け」するケースもある。その「過程」を俯瞰(ふかん)的に見守る姿勢を、大切に捉えている。

「選手の能力、成長曲線は、何となく分かるものですが、僕はそういう目で見たくはないんです。常にフラットに見ようとしているつもり。選手というのは絶対に波もあるし、若い選手は波がある中で成長していくもの。だから常に、今はどうか。過去と比べるのではなく、今は良くても、また落ちるかもしれない。そういう意味で、どういう時でもフラットに見るようにしています」

だからこそ、たとえドラフト上位指名で期待値が高い選手でも、松井氏は簡単に評価したり、固定観念や「枠」に入れようとはしない。

「メジャーから聞かれても、この選手の今についてはこう思う、ということを伝えているだけです。あくまでもこの選手を推薦するとか、コイツは絶対にいけるとか、そういうことは絶対に言うつもりはない。できる限り客観的に見たいと思っています」

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四竈衛Mamoru Shikama

Nagasaki

長崎県出身、米アリゾナ在住。北関東支局(群馬・栃木)を経て、巨人、ヤクルトなどを取材。1999年からメジャー担当。趣味は料理とゴルフ。