【代打の神様対談〈中〉】友野一希と桧山氏メンタルを説く「漫画の主人公ぐらいの」

フィギュアスケート男子の友野一希(24=上野芝スケートクラブ)がプロ野球・元阪神タイガースの桧山進次郎氏(53=日刊スポーツ評論家)と語り合う「代打の神様」対談。

初対面ながら互いの競技との共通点や違いを口にし、冒頭から盛り上がりを見せました。

3回にわたってお届けする特集の第2回は、本番で力を発揮するための練習の考え方、プロとアマチュアの違いにも話が及びました。(敬称略)

フィギュア

桧山氏(左)に自身のスケート靴の説明をする友野

桧山氏(左)に自身のスケート靴の説明をする友野

友野「ケガするかしないか、ギリギリを攻めないと」

友野 僕、野球選手の練習動画とか、他のスポーツ選手の考え方も見るんですけど、信じるものを突き詰めた人が、やっぱり上にいくイメージがあります。もちろん、大前提で基礎は必要ですが。自分が「いい」って思ったものを、いかに突き詰められるかが大事だと思う。不思議なんですけど「うまくなろう」と思うと、いろいろな失敗、ダメなことを経験して、どんどん正解にたどり着いていくんですね。(出身の)同志社大学でも心理学の授業を受けている時に、教科書を見ていると「自分もその通りだなぁ」というのがある。トップ選手は個性が光りますよね。(周囲を)参考にはしますけど、あんまり正解を求めすぎないというか、やってみて、最後は自分がやりたいと思ったことを、どれだけ突き詰められるかが、自信になるかなと思います。

桧山 やはり何かを突き詰めようと思うと体力がないとね。体力があるから技術練習ができる。ああでもない、こうでもないと考えながら、それが出来上がるとメンタルが強くなる。どれだけ突き詰められるかというのが大事でしょうね。

友野 プロ野球は1年のほとんどがシーズンじゃないですか。試合ばっかりなので、どういう風に調子を上げていくのかが気になります。

桧山 シーズンは長いのでやはり体力勝負になります。春先と夏場では調子のアップダウンが違ってくるし、自分で練習不足と思ったらあえて練習量を多めにするし、調子の悪さが疲れからきている時は逆に休まないといけない。それはまた、若手とベテランでは違ってきます。若い時は練習量もたくさんしないといけないけど、やっぱりベテランになってくると、やればやるほど疲れが蓄積します。自分の体をいかに知るかという点も大事ですよね。

友野 自分の体を知っている人はうまくなるし、ケアも人それぞれ。自分のどういうところが弱いかも知っている人が、強くなっていく気がしています。

桧山 自分を知るには、自分を全力で追い込んでいって、突き詰めるところまでいかないといけない。「ここは休んだらいいだろうか?」「ここはもう少し動いたらいいだろうか?」というのは、最後のへこたれるまで、極端にいうと限界までやった選手が分かることだと思います。それをやってもいないのに「今は休む時や」と錯覚に陥ってしまう人には、「ほんまかいな。そこまでやってへんのに何を言うてんねん」ってなるからね(笑い)。僕自身は経験上、抜くことを覚えて良くなることができるのは、全力で突き詰めた人だと思っているんです。

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