【スクール☆ウォーズのそれから/3】伝説の目撃者、岩崎良美演じたマネジャーの回顧

伝えたい物語がある。たとえ、その主人公がこの世を去ったとしても。学校の廊下でバイクを走らせ、大敗した試合で「悔しいです!」と泣き叫んだ小畑道弘は、昨年6月に他界した。それでもドラマは語り継がれる。人々の心に、当時の主将が生き続ける限り。

ラグビー

〈山口監督就任後の初代マネジャー 今井裕子編〉

伏見工業の山口良治元監督(左)と元マネジャーの今井裕子さん

伏見工業の山口良治元監督(左)と元マネジャーの今井裕子さん

「小畑君お誕生日なんです…生きていたら66歳に」

「今日は小畑君のお誕生日なんですよ。

生きていたら66歳になるんですね。

ああ見えて、寂しがり屋だったから。

こうやって今日、お話をするのも、そういうことなのかなあ」

2023年1月10日。

伏見工業ラグビー部でマネジャーを務めていた今井裕子は懐かしそうに、もうすぐ半世紀が過ぎようとしている高校時代を思い出していた。

全日本でフランカーだった山口良治が監督に就任し、最初のマネジャーになった。

ドラマ「スクール☆ウォーズ」では岩崎良美が演じる。

小畑とは、ドラマでは「森田光男」。

その冒頭、学校の廊下でバイクを走らせる。

花園高校に0-112で大敗すると「悔しいです!」と泣き叫んだ、あの日の主将だった。

2022年6月25日。

長い闘病生活の末に、小畑は息を引き取った。

それから半年。

何かの偶然なのか。

それとも、もうこの世にはいないはずの小畑が、そうさせているのか。

取材をした日。

それは、生きていれば66歳を迎えるはずだった小畑の誕生日だったというのである。

「昨日、ラグビー部のみんなで集まっていたんです。

初優勝した時の子たちとか。ほら、平尾君と同じ代の子たちも来ていました。

レギュラーになれたとか、俺はなれなかったとか。

いつ会っても、同じ話ばかりなんですけどね。

ラグビー部のみんなが、横へ横へとつながって集まってくるんです。

みんなで盛り上がっている時に、ふと、『ああ、明日は小畑の誕生日やなあ』となって。

こうやって、お話をするのも、偶然ではないような気がしますよね」

マネジャーになったのは2年生になってから。

すぐに伝説の試合はあった。

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。