【スクール☆ウォーズのそれから/2の下】この人のために命がけで…そう思える人に出会えた

物語の始まり。それは学校の廊下に響いたバイクのエンジン音だった。そこから教師と生徒の深い絆が生まれる。それは半世紀近くが過ぎても、薄れることはなかった。そして、あの人は恩師より先に旅立った。

ラグビー

〈悔しいです! 畜生! 俺は勝ちたい! 小畑道弘:下編〉

荒れた伏見工の生徒にラグビーの指導をする山口良治監督(左)(蔦川譲氏提供)

荒れた伏見工の生徒にラグビーの指導をする山口良治監督(左)(蔦川譲氏提供)

桜の季節、学校に響き渡ったバイクのエンジン音

山口が伏見工業に赴任したのは1974年の春だった。

まだ桜の咲き残る校庭にバイクのエンジン音が響いていた。

驚いた山口が教室から廊下に出る。

すると、そのエンジン音が近づいてきた。

まさか、グラウンドから校舎に入り、ものすごい音とともに今まさにバイクは廊下を走ろうとしていた。

「止まれ! 止まれ!」

両手を広げて立ちふさがる。

「信じよう-。生徒を信じるんだ」

そう念じ、目を閉じた。

爆音はどんどん近づいてくる。

そして、急ブレーキをかける音とともに目の前で止まった。

それが小畑道弘だった。

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。