陣営皆泣いた寺地拳四朗の死闘 セコンドが見た息づかいが聞こえるドキュメント

王者、そして陣営も涙した。ボクシングのWBAスーパー、WBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(31=BMB)は4月8日、東京・有明アリーナで挑戦者アンソニー・オラスクアガ(24=米国)と見る者の心を揺さぶる死闘を演じ、9回TKOで勝利した。激闘の裏側をセコンドについた篠原茂清トレーナー(60)の視点で振り返る。

ボクシング

〈高校時代からトレーニング指導する篠原トレーナー〉

4月8日オラスクアガをTKOで下し防衛に成功、寺地は涙を流した

4月8日オラスクアガをTKOで下し防衛に成功、寺地は涙を流した

4・8「天才」オラスクアガとの防衛戦

試合後の勝利インタビュー、ベルトを守った寺地は感情を押し殺すことなく泣いた。「心が折れそうになったけど、(加藤)トレーナーが『折れるな!』とかけてくれた言葉が響いた。1人で戦っているんじゃないんだなと。支えてくれたチームに感謝して泣いてしまった」。王者だけじゃない。その姿をリング下から見上げた陣営も涙した。

父の寺地永会長は「倒すか倒されるかを想定していたが、それを超える命の削り合い。父親として、見ていて辛くなる試合だった」と表現した。オラスクアガとは6年前にスパーリングで拳を交えており、その時に寺地会長ら見守った者は「天才」と感じたという。

当初はWBO王者ジョナサン・ゴンザレス(プエルトリコ)との3団体統一戦だった。しかしゴンザレスがマイコプラズマ肺炎を患って来日が不可能となり、試合約2週間前に決まった相手がオラスクアガ。急きょ決まった経緯に、相手は無敗とはいえまだキャリア6戦目。周囲は「楽勝」ムードもあったが、陣営の緊張感は違った。

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スポーツ

実藤健一Kenichi Sanefuji

Nagasaki

長崎生まれ、尼崎育ちで九州とお笑いを愛する。
関大を卒業後、90年に入社。約2年の四国勤務でいろいろ学び、大阪に戻って主に大相撲、ボクシングを担当。
その後、担当記者として星野阪神の優勝に立ち会えて感動。福岡勤務などをへて相撲、ボクシング担当に舞い戻る。