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JT Thunders & JT Marvelous コラム

復帰2年目、さらに進化した山本愛

復帰2年目の豊富を語る山本愛
復帰2年目の豊富を語る山本愛

 昨シーズン9位からの巻き返しを図るJTマーヴェラスに、今年頼もしい新戦力が加わった。久光製薬から移籍加入した、ミドルブロッカーの山本愛(旧姓大友)だ。

 仙台育英高を卒業後NECに入社し、全日本にも選抜された。2004年のアテネオリンピックに出場し、人気、実力を兼ね備えたスター選手となった。

 しかし、06年1月、結婚、出産を機に引退。出産後に復帰することは、考えていなかった。

 「とにかく、疲れていました。注目されるのはすごく嬉しいし力になるんですが、逆にプレッシャーに感じてしまった。精神的に弱っていましたね。アテネオリンピックが終わって力が抜けてしまったというのもあります。アテネの前みたいに、本気になってボールを追いかけていたかというと…。なんだか、そこにボールがあるからやっている、みたいな感じで、中身のない練習がずっと続いていて、とりあえずバレーから離れたいという気持ちがありました」

 そして2年間、バレー界から姿を消した。

 しかし育児が落ち着き始めた昨年、久光製薬の真鍋政義監督(現、全日本監督)に熱心に誘われ、現役に復帰した。ただ、2年間のブランクは予想以上に大きかった。

 「復帰する気はなく引退して、何もしていなかったので、技術どうこうの前に体が本当にしんどくて…。足の甲がボコッとはれたり、ひざや足首も、骨が痛くて、歩くのさえ一苦労でした。復帰しなきゃよかった、と正直後悔した時期もありました(苦笑)」

 それでも、2008/09V・プレミアリーグは、開幕戦からシーズンを通してレギュラーとして出場した。思い通りに動かない体、なかなか戻らない試合勘にもどかしさを感じながらも、「今結果を急ぐんじゃない、焦っちゃだめだ」と自分に言い聞かせ、1試合1試合を、これからまた続く現役生活のための練習ととらえて前進した。

 復帰2年目の今シーズンは、「昨年よりも体が動くようになったので、自分自身に求めるレベルもすごく上がっています」と手応えを語る。

 以前は、スピードと高さを武器に、アンテナまで一気に駆け抜けるブロード攻撃で相手ブロックを置き去りにするなど、走る攻撃を得意とした。しかし昨シーズン在籍した久光製薬では、苦手としていたA、Bクイックなど真ん中からの攻撃を重点的に強化。また、「主流になってきたリードブロックに対しては、打ち落とすのではなく、長いコースに打つことが有効」と、打ち方や助走の入り方を工夫するなど、状況に応じて選択できるプレーの幅が格段に広がった。

 昨シーズンのJTは、ミドルブロッカーの攻撃力が弱く、サイドに負担がかかっていた。そこに攻撃力のある山本が加わることで、相手ブロックはミドルブロッカーに引きつけられてサイドのブロックが薄くなり、JTの持ち味である速いサイド攻撃が生きる。

 山本がチームにもたらす影響は、プレー面だけではない。練習中、山本は誰よりも多く周りとコミュニケーションをとってきた。セッターとコンビネーションについての確認であったり、ブロックについて、後ろのレシーバーとの確認などを、常に欠かさない。

 「例えば、ブロックを抜けたボールをレシーバーが拾えなかった場合、それはブロックの責任なのか、レシーバーの準備が遅かったからなのか。それはその場で詰めるようにしています。いいプレーにしろ、ミスにしろ、ちゃんと目と目を見て、お互いにどうだったかという言葉の掛け合いをしないと、生きた練習にならないと思うんです」

 JTに合流して間もないころは、そうした練習中の選手間のプレーの詰めが甘いと感じた。しかし山本が積極的に周りに声をかけ続けたことで、今ではチーム内で、そういったコミュニケーションが当たり前のように見られるようになった。

 練習が終わると、3歳になった愛娘を保育園に迎えにいくのが日課だ。「昨年はベビーシッターさんにお願いして帯同していたんですけど、いつまでも大人の中に入れておくのもどうかなと思ったし、友達も作ってほしいので、今年は保育園に入れました。でも、最初はちょっと切なかったですね」と、母親の顔をのぞかせる。

 唯一無二の経験を積み重ねてきた山本が加入した新生JTが、どんな戦いを見せてくれるのか。11月28日、いよいよ2009/10V・プレミアリーグが開幕する。【米虫紀子】

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