首位JTを引っ張る22歳新主将
- 好調なチームを引っ張るVリーグ最年少主将の位田
「止まんなかったですね」。
11月28日の09/10V・プレミアリーグ開幕戦で昨季の女王・東レを下し、JTの新主将・位田愛は笑顔で言った。
「相手がどんなメンバーで来るかわからなかったし、最初はお互いに探り探りでしたけど、途中から、『自分たちがやるべきことをしっかりやっていけば大丈夫。この勢いで行こう!』と躊躇(ちゅうちょ)することなく乗っていけました」。
第1セットを25−18で先取したJTの勢いは止まることなく、ストレートで勝利。安定した守備からの速いコンビバレーが、面白いように機能した。位田自身も、アタック決定率50.0%、サーブレシーブ成功率86.4%という高い数字を残し、チーム最多の18得点をたたき出す最高のスタート。東レの菅野幸一郎監督は試合後、「今日は位田キャプテンに、こちらがしっかり対応しきれなかったのが敗因の一つ」と語った。
JTの勢いは続く。翌日は昨季苦手としていた久光製薬に3−1で勝利をおさめた。天皇杯皇后杯開催のためリーグが中断するまで、JTは開幕6連勝の首位。失ったセットはわずか1セットだ。
位田は4年目の22歳。V・プレミアリーグ8チーム中最も若い主将だ。レギュラーに定着したのは昨季の途中から。本来なら、まだ自分のプレーだけで手一杯の状態でもおかしくないが、そう言っていられる立場でないことは自覚している。
「自分の調子がよくても悪くても、チーム全体を見なきゃいけない。例えば試合の流れの中で、『ここは我慢しなきゃいけないところだ』と、頭の中で思っているだけじゃなくて、声を出したりしてチーム全体に働きかけることが自分の役割です」と位田は言う。
昨季得た経験と、今季に向けて課題を強化したことが、今の位田を支えている。昨季リベロの井上琴絵と共にサーブレシーブの中心になっていた位田は、とにかくサーブで狙われた。特に4月の入れ替え戦では、徹底的にターゲットにされ、初戦の日立佐和戦は77本ものサーブを受けた。
「あんな緊張感の中で、あれほどのサーブを受けるというのはめったにないこと。その経験ができて、勝てたのはすごく大きいです」。
一方、一番の課題がブロックだった。相手もそれを承知で位田のブロックの前から攻めてくることが多く、引け目を感じていた。
問題はタイミングだった。今季に向けて、「もっと早く跳べ、早く手を出せ」と指導されながら、徐々に手応えをつかんでいった。
「はじめは、『こんなに早く出すの?』と違和感があったけど、コツをつかめてきました。早く手を出すことで、後ろのレシーバーがボールのコースを予想して入れるので、自分が『抜けた』と思っても、後ろが上げてくれるんです。『ああ、そういうことなのか』とやっとわかりました」。
今季は、直接的なブロックポイントは多くないものの、ブロックアウトを取られることが少なくなり、ワンタッチを取ってチャンスボールにつなげることも多い。そうして、昨季の不安材料を改善できたことが、コート内での落ち着きにもつながっている。
ただ、リーグはまだ始まったばかりだ。「相手がどんどんうちのデータを取って、やりたいようにやらせてくれなくなってきている。だから苦しい展開も多くなってきました。同じようにやっていたら勝っていけない」と話していた位田。それが現実となったのが、12月18日の天皇杯皇后杯準々決勝だ。リーグの開幕戦で快勝した東レに、逆にストレート負けを喫した。
今季の開幕前、石原昭久監督は、「3レグ制から4レグ制に変わった今季は、返し技合戦になる」と語っていた。特に6連勝で首位を走るJTは、間違いなく他チームのターゲットになる。それをはねのけて、勝ち進まなくてはならない。新生JTの、そして新主将・位田の底力が試される今後のV・プレミアリーグは、来年1月9日に再開する。【米虫紀子】