多くのアスリートが持っているであろうルーティン。私も選手時代は、試合に向けていくつかのルーティンがあった。今回は、その中の1つを紹介しようと思う。それは、試合前日のアイスクリームだ。

ある試合で結果も内容もとても良かったことがあった。試合後の振り返りとして、試合前の行動を思い返してみると、前日の夜にアイスクリームを食べていたのだ。それ以来、試合前日のルーティンとして私の中に取り入れられた。


ロンドン五輪時に市内で見つけたアイスクリーム店
ロンドン五輪時に市内で見つけたアイスクリーム店

アイスクリームと言っても、少しだけこだわりがあった。それは、なるべく抹茶味を選ぶようにしていたことだ。

その理由は、抹茶の成分には、風邪の予防や体脂肪を減少させる効果が期待されるカテキンが多く含まれている。それに加え、疲労回復には欠かせないビタミン(A.K.E.B1.B2)を豊富に含み、アスリートにとってとても大切である鉄分など、身体の調子を整えてくれる効果が高いことも魅力的な要素の1つだった。さらには、茶葉に含まれるテアニンというアミノ酸は、睡眠の質を高めてくれ、ストレスを軽減する効果が期待されているのだ。

これだけ多くの効果がある中で、特に私が注目したのは、疲労回復とリラックス効果。選手であるからには「ベストコンディションで試合を迎えたい!」という目的も忘れることはできなかった。大好きなアイスクリームを、罪悪感なく食べられる特別な日にも、思考は競技から離れることはなかった。昔から日常にあったお茶の香り。程よい甘さとともに、安心感と癒やしの時間を提供してくれた。そして、そのルーティンを取り入れてからは、前日にアイスクリームが食べられるというだけで気分が明るくなり、試合に立ち向かう勇気が生まれた。

問題は、海外ではそのルーティンがうまくいかなかったことだ。抹茶味のアイスクリームが手に入る確率は低く、それどころか、アイスクリームすら食べられないことも多々あった。その場合は、夕飯時にホテルのバイキングで出されているスイーツを食べてもいいことにしていた。国によっては、あまり魅力的なスイーツがない時もあったが、「今日は甘いものを食べてもいい日」と思うだけでも心が少し軽くなった。


アスリートであるという自覚が生まれてからは、日頃から食生活には気をつけて過ごしていた。3度の食事や間食にもこだわっていたし、お菓子を食べる習慣もほとんど無かった。

引退後に、何も気にすることなくお菓子を食べている私の姿を見た姉が「真依がお菓子を食べてる!」と驚いたくらいだ。

体が資本となるアスリート。食事は練習と同じくらい大切な意味がある。しかし、ストイックすぎる食生活でストレスが大きくなってしまっては、心への影響も大きい。現役中とはいえ、目標に向かって頑張っている自分を認め、甘やかす時があってもいいと思う。自分の中でのルールを作り、自信につながるルーティンを見つけてみるのもオススメである。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)