日本水泳連盟飛込委員会強化事業より、MPA(medal potential athlete)強化事業が始まった。日本の飛込界の悲願である「オリンピックでのメダル獲得」。その実現に向け、大きな取り組みがスタートした。その他の国際大会でのメダル獲得も、オリンピックへと繋がるとても大切な過程だ。メダル獲得の可能性を秘めた個人(各種目1名を上限)に対しての重点強化を実施するというのが、この事業の目的である。

選考基準となったのは、これまでの実績と種目の難易度の高さが大きな判断材料となった。

今回、対象選手に選ばれたのは、男女合わせて2人。

1人目は、玉井陸斗(15=JSS宝塚)だ。飛込競技では歴代最年少で東京オリンピックに出場し、男子10m個人で7位入賞を果たした。演技の難易度も世界のトップレベルであり、今後の活躍がかなり期待できることが選考の決め手となった。

そしてもう1人は、三上紗也可(21=日体大)だ。三上は2019年に行われた世界水泳で5位入賞を果たし、世界のトップダイバーの一員となった。そのまま順調に東京オリンピックへも出場。女子ではまだ飛んでいる選手が少ない「5154B」(前宙返り2回半2回捻り、エビ型)を武器に世界で活躍中だ。

三上にMPAに選ばれた今の気持ちを尋ねると、「MPAの強化選手に選ばれたことはとても光栄です。そしてMPAの強化選手に選ばれたということは、日本のトップに立ち世界で活躍しなければいけない立場であるということだと思います。これからもMPAの名に恥じないように一生懸命努力します。そして、オリンピックでメダルを獲得し、今競技をしている選手やこれから競技を行う子どもたちに希望を与えたいです」と語ってくれた。

MPAに選ばれた選手は、2024年パリオリンピックの選考会となる世界水泳(ドーハ)までの主要国際大会の優先派遣が約束される。その他にも、ナショナル合宿とは別に、国内外で合宿を行う場合、費用を負担してもらうことができる。さらには、出場したいグランプリなどに派遣してもらうことも可能となる。

結果を出せば、これほど優遇される制度は私の時代には無かった。もし現役中にこの制度があれば、きっと1つのモチベーションとなっていただろう。

この制度によって、選ばれた選手は目標とする試合までの計画を立てやすくなるだけでなく、精神的負担もかなり軽減された状態で試合に臨めるのではないだろうか。

今後、選手たちの活躍によってはMPA選手が増える可能性もある。チャンスはみんなにあるのだ。日々の努力を結果へとつなげ、より多くの選手がMPA選手へと成長してくれることを願っている。そして、短い競技生活の中で、さらに充実した日々をつかみ取ってほしい。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)