今月4日に閉幕した水泳世界選手権。飛び込み競技で日本勢は2種目で銀メダルを獲得するというこれまでにない好成績を残した。しかもそれだけではない。日本代表として出場した9選手全員が、12人で行われる決勝へと進み、世界のトップとして戦えたことも今までにない活躍ぶりだった。

出場した全選手の結果は次の通り。

・男子1m<11位>玉井陸斗 326.60点

・男子3m<6位>坂井丞 424.00点<12位>須山晴貴 344.90点

・男子10m<銀メダル>玉井陸斗488.00点<12位>大久保柊 370.25点

・女子3m<7位>三上紗也可 294.20点<10位>榎本遼香 281.05点

・女子10m<6位>荒井祭里 307.00点

・女子3mシンクロ<銀メダル>三上紗也可、金戸凜 303.00点

・女子10mシンクロ<4位>荒井祭里、板橋美波 297.84点


私も15歳から引退するまでの14年間、日本代表として戦わせてもらったが、これほどみんなが活躍できた大会はあまり記憶にない。世界の厚い壁をなかなか超えられなかった日本。今大会では「日本チーム」という戦い方で強さを見せてくれたように思う。

そして個々の力を存分に発揮できる環境をつくり、支えてくれた関係者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいである。

そんな余韻に浸っていたいところだが、飛び込みは夏がシーズン。休んでいる暇はない。選手たちは、帰国後すぐにまた次の試合に向けてそれぞれの場所で練習の日々が始まっている。

世界選手権からちょうど1カ月後となる8月5日からは、栃木県・日環アリーナ栃木で日本選手権が始まる。今年の日本チャンピオンを決める大会だ。もちろん、世界選手権に出場した選手たちも出場する予定だ。

見どころはたくさん。玉井陸斗や三上紗也可など世界のトップ選手の演技は必見だが、そこに追い付け追い越せと勝負を挑む選手たちとの熱い戦いは、見ごたえのあること間違いなしだ。

特に私は、金戸凜(18=セントラルスポーツ)に注目している。世界選手権では、3mシンクロのみの出場だったが、彼女は板飛び込みも高飛び込みも飛べる“二刀流"の選手。実は、両種目で世界を狙える貴重な存在なのだ。

彼女の目標は、祖父母、両親に続き「3世代でオリンピック出場」。その目標に向かって、昨年の東京オリンピック出場も目指していた。しかし、国内選考会前に、以前から痛めていた肩の症状が悪化。将来を考え手術を受ける選択をした。そのため、しばらくは肩への負担が大きい高飛び込みの練習を制限していた。それが最近では、以前のように練習が出来るようになってきている。

彼女の武器でもある5237D(後ろ宙返り1回半3回半捻り自由型)は、日本の女子で唯一彼女だけが飛べる大技だ。それ以外の種目でも、美しいフォームと幼少期から培われた入水感覚は素晴らしく、人目を引く。

世界選手権でメダリストとなり、勢いに乗ってきている金戸。心身共に成長し、演技にもさらに磨きがかかってきているのではと期待している。

日本選手権での各試合は、YouTubeで解説付きで配信される予定だ。ぜひ皆さんもこの機会に観戦してみてはいかがだろうか。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)