今月13日から15日にかけて、宇都宮市の日環アリーナ栃木で「いちご一会とちぎ国体」の飛び込み競技が開催された。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となった今大会。やはり注目を集めたのは、少年男子高飛び込みに出場した玉井陸斗(16=兵庫県)だ。


少年男子高飛び込みで優勝した玉井陸斗(共同)
少年男子高飛び込みで優勝した玉井陸斗(共同)

「今回はどんな演技を見せてくれるだろうか」。私も毎回、彼の演技を楽しみにしている1人だ。そんな期待に応えてくれるかのように1本目から好調だった玉井。5本目の307C(前逆宙返り3回半抱え方)では100.30点という高得点をたたき出した。勢いそのままに、最終種目の5255B(後ろ宙返り2回半2回半ひねりえび型)でも、7人の審判のうち6人が満点の10点を出す完璧な演技で会場を沸かせた。自己ベストとなる573.55点で優勝し、世界選手権銀メダリストとしての貫禄を見せつけた。

彼のすごいところは、「有言実行」をいとも簡単に成し遂げてしまうところだ。結果を出して当たり前という立場。しかし、そのプレッシャーをも楽しんでいるかのように、次々と結果につなげてくる。今シーズン最後の試合にふさわしいパフォーマンスでしめくくり、来年の世界選手権(福岡)へのイメージもばっちりである。


少年男子高飛び込みで最後の演技を終え、笑顔を見せる玉井陸斗(右)(共同)
少年男子高飛び込みで最後の演技を終え、笑顔を見せる玉井陸斗(右)(共同)

私も高校1年生から引退するまで、石川県の代表として毎年国体へ参加していた。国体は都道府県対抗の特別な大会。1位は8点、2位は7点というふうに、入賞した8位までの選手に競技得点が与えられる。

国体への意欲は、各都道府県によって違うが、石川県はとても力を入れている県の1つだ。毎年、全競技を合わせて「1000点」を目標にかかげている。

私も現役時代、故郷である石川県のために、1点でも多くの点数を獲得したいという思いが強かった。「競技ができているのは石川県のおかげ」という意識が大きかったからだ。そのため、1年の中で最も「優勝」にこだわっていた大会である。

数えると優勝は19回。私が出来る「恩返しのかたち」だと思い頑張っていたが、応援の力を1番感じる大会でもあった。地域の選考会が終わり、国体に参加するさまざまな競技の代表選手たちが決定すると、盛大に「激励会」が行われた。そうすると、「いよいよ今年も始まるな」という気持ちになっていた。そこでもたくさんの方々からの熱い激励を受け、「みんなで戦う」というチームの指揮が高まっていた。

同郷だという共通点で、これほどまでに「チーム力」を感じる大会は無かった。試合会場にも石川県からたくさんの方が応援に来てくれた。そして、恥ずかしくなるくらいの大きな声援を送ってくれた。どんな大会であっても、試合前は緊張で逃げ出したくなるほどのプレッシャーを感じていた私。しかし、国体だけは「応援の力」がとても心強かった。そして、試合後にはいつも温かい言葉をかけてくれた。たくさんの大会に出場してきたが、石川県の代表として戦っている時が、1番強い気持ちで戦えていたような気がする。

たくさんの感謝と共にさまざまな思い出を残してくれた国体。今回参加した選手たちも、きっと故郷の温かい声援を感じ、今持っている力を存分に発揮した大会になったのではないだろうか。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)