横領の組織的隠蔽(いんぺい)など一連の不祥事が続いた日本バドミントン協会が、Jリーグ前チェアマンの村井満氏(63)を新会長として迎える方針を明らかにしている。

Jリーグ前チェアマンの村井満氏(2022年撮影)
Jリーグ前チェアマンの村井満氏(2022年撮影)

14日の臨時理事会後に毛利達彦専務理事(63)は「実績も申し分なく、経験とノウハウをお借りしていきたい」と人選理由を説明した。22日の評議員会で承認され、直後の臨時理事会でまずは副会長に就任。そして6月の改選期までに会長に就く見通しだ。

日本協会が標榜する「理事会改革」を推し進めるうえで、Jリーグのトップを4期8年務めた村井氏にかかる期待は大きい。その一方で外部からやってくる大物に身構える声も。匿名を条件に取材に応じたある理事は「外部勢力が強くなりすぎて、業界生え抜きの人間が肩身の狭い思いをする事態は避けたい」と本音を漏らす。

今度の評議員会で話し合われる重要案件はもう1つある。不祥事に関わった6人の理事と2人の幹事の解任も議題となる。複数の出席者によれば、昨年11月下旬の会合でも理事解任を求める声はあったが、当時は議題に上がっていないことを理由に採決を拒まれた。

22年10月、バドミントン協会の不祥事について頭を下げる関根会長。右は顧問弁護士の葉玉氏
22年10月、バドミントン協会の不祥事について頭を下げる関根会長。右は顧問弁護士の葉玉氏

その前回の評議員会では、不祥事による処分を受けた関根義雄会長(当時)が議長を務めることを疑問視する意見が出た。議長変更について採決が取られたが、55人中賛成23票と過半数に届かなかった。その数字から今度の理事会でも「理事解任には至らない」と予測する声が上がる一方で、「あと5票増えればひっくり返る。その可能性はある」との見方もある。

村井氏が就任すれば理事は18人となるが、不祥事にかかわった6人が解任された場合、定款で定められた最低数の15人を切る。協会側は、結果として空白期間が生じ、理事会運営は停滞することになると繰り返してきた。

しかし臨時評議員会を招集した木内広史評議員(茨城県協会理事長)は、「理事定数が定款を下回ったとしても、必要な手続きを踏んで速やかに新しい理事を選べば支障はない」と強調。「バドミントン協会は不祥事に関わった者を守る組織だと世間に思われたら、それこそ終わってしまう。村井氏の顔に泥を塗ることになりかねない」と呼びかけ、全国の評議員1人1人に書面を送付した。

協会の一連の不祥事により、今年度の強化費2割削減が決定。昨年暮れの全日本総合選手権では、国から優勝選手に授与される「内閣総理大臣杯」などが用意されない異常事態となった。さらに、現在まだ継続中のスポーツ団体ガバナンスコードの適合性審査で不適合となれば、強化費ゼロに陥る。協会関係者は「昨年12月中には審査結果が出ているはずなのだが…」と焦燥感を募らせる。審査する日本スポーツ協会などによれば、来月半ばごろに結果が判明する見込みだ。

日本バドミントン協会の中村会長(右)と毛利新専務理事(2022年11月30日撮影)
日本バドミントン協会の中村会長(右)と毛利新専務理事(2022年11月30日撮影)

現役トップ選手に加え、ジュニア層への影響も大きい。だからこそ元オリンピアンも危機感を募らせる。元日本代表で五輪2大会出場の池田信太郎さんは自身のツイッターに「なるべく早く村井さんに改革を進めてもらうためにも旧勢力の一掃は急務」「可能な限り綺麗な協会にして渡してあげたいと思うのは僕だけですかね」と投稿。ロンドン五輪銀メダルの藤井瑞希さんも「私もそう思います!! とにかく、新しいバドミントン協会を」と呼応した。

投票は日曜。協会が新しい一歩を踏み出すためにも、55人の評議員が持つ1票は重い。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)