平成に輝かしい記録と記憶を残した石川遼(27=CASIO)は、新時代に完全復活をかける。ヘルニアの症状で、開幕戦の東建ホームメイト杯を欠場。今季初戦となる中日クラウンズ(5月2日開幕、愛知・名古屋GC和合C)は、9年前の最終日に、世界記録となる58を出して18位からの大逆転優勝を達成した舞台でもある。ニッカンWEB限定の2回目は、賞金王返り咲きと、世界再挑戦への決意。

プロ12年目のシーズンは、思わぬケガから始まった。4月13日にあったツアー競技外の岐阜オープン後の練習中に、ぎっくり腰のような症状が出た。当時の状況を、石川は車に例えた。

「冬の車みたいでしたよね。夏ならば、毎日、車を走らせていると、いきなりアクセルを踏み込んでも、走ってくれる。でも、冬に何日か走らせていないと、いきなり踏み込むと(エンジンが)ぐずつくことがある。最近は電気自動車があるから、そんなことはないんでしょうけれど。でも、そんな感じでした。

腰をやるのは3回目ですが、自分のヘッドスピードに対して、体がついて行けていない状態なんです。今のスイングだと、腰にくる。寒かったりすると、余計にそうなってしまう。今は自分に合った筋肉の付け方を勉強中です」

すぐに主治医の診断と、MRI検査を受けた。すると、「ヘルニアが出ているかも知れない」と伝えられたという。国内ツアー開幕の東建ホームメイト杯を、目前に控えていた。

「診断を受けたその時には、ちょっと東建は厳しいな、と。休まざるを得なくなった。(腰の)関節分離症で、5番のヘルニアが出ていた。関節と関節の間が狭くなっているので、広げる治療をやりながら、それが良くなるまでは練習はできなかった。だから、球を打ち始めたのは先週末(4月下旬)からなんです。

打つなら、100%で普段通りに打たないと、長期的に見て(スイングが崩れて)ゴルフが悪くなってしまう。だから打てませんでしたね。

先週末にようやく打てるようになって、炎症が出なければ(中日)クラウンズには間に合うかな、と。今の感じでは、もう問題はないです。痛みもない。出ると決めたからには、いい調整をして、いいスコアで回りたいです」

1960年(昭35)から続く大会は、昭和から平成をまたぎ60回目を迎える。予選ラウンド(2、3日)は大会最多タイ5勝でレジェンドの尾崎将司(72)と、マスターズ58位の新世代のスター候補生でアマチュアの金谷拓実(20=東北福祉大)と同組になった。

「久しぶりに一緒に回らせて頂くので、楽しみですね。ジャンボさんには、第2日が終わった後に、直接聞きたいことがある。自分のゴルフに関して、質問がしたい。率直に、僕のゴルフをどう見て頂いているのか。今、自分の中で悩みがあるわけではないのですが、(自分が)見えていないだけで、足りないところはあると思う。ジャンボさんは、核心しか話さない。愛のある方なので、どんなラウンドになるのか。ワクワク感と同時に、緊張感があります。

(金谷選手とは)練習場で話をしたんです。吸収力のある年代で、ここ2~3年で飛距離も伸びて、体も大きくなっている。彼が、このコースをどう攻略するのか、楽しみですよね。これからの日本ゴルフ界を背負っていく選手になると思うので」

そして、何よりも石川は、自身の復活を思い描く。

「今年は日本で1番に、賞金王になりたい。それが第1歩ですね。世界一の人たちに挑んでいく。そんなシーズンにしたい」

平成を全速力で駆け抜けたゴルフ界のスターは、令和でも記録と記憶を残すことができるのか-。

新たな伝説が今、始まる。

【取材、構成=益子浩一】