女子ゴルフのAIG全英女子オープンで、日本人として42年ぶりにメジャー制覇を果たした渋野日向子(20=RSK山陽放送)の原点、秘密、偉業の効果などを探る緊急連載「スマイル旋風」をスタートする。

初出場初優勝の偉業を遂げ、海外メディアからも「スマイル・シンデレラ」と注目。初回は、岡山市・平島スポーツ少年団ソフトボールチームの岩道博総監督(72)に、世界を魅了した笑顔の原点を聞いた。そのルーツは「やんちゃプレー」にあった。

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72歳の岩道総監督は、渋野の印象を「普通の子じゃ」と言った。しかし、その後に語られたプレースタイルは、とても「普通の女の子」ではなかった。

岩道氏 投手としては速球派やね。とても球が速かった。打者としては駆け込んでセーフ、内野安打がやたら多かった。投手のくせに、頭からスライディングしてな。いつも冷や冷やしとった。女の子じゃなかったな。何をやらせても男の子より上。腕相撲してもみんな、やられとった。

渋野は小学2年からゴルフと同時にソフトボールを始めた。最初は男子にまざって女子は1人だけ。それでも天性の運動能力は、男子を沈黙させていった。小学5年時には完全にレギュラー。しかもエースでクリーンアップを担った。男子からはひと言も不平不満はなかったという。

岩道氏 勝ち気が過ぎたね。勝負に厳しすぎる。ストライクが入らん、思い通りの投球ができんと、陰に隠れて泣いとった。

勝負にこだわる「血」は親から受け継いだ。父悟さんは砲丸投げ、円盤投げで国体2位。投てき種目の前は短距離、100メートルでも岡山県でトップレベル。投てき種目を始めてからは、岩道氏いわく「50キロ近い小学生を片手で持ち上げる。(アテネオリンピック(五輪)ハンマー投げ金メダルの)室伏(広治)のような体になった」。

母の伸子さんも、やり投げで高校総体に出場したアスリート。渋野は、その両親のもとで育った3姉妹の真ん中。姉は絵画に秀で、妹はソフトボールからゴルフと姉の背を追う。それぞれの道で一流を目指す環境ですくすく育ってきた。

ソフトボールでは左打ち。それも岩道氏ら指導者の狙いがあったという。

岩道氏 同時にゴルフを始めたと聞いて左打ちを勧めた。自分の経験だが、右でバットスイングして、そのままゴルフをするとスライスが出やすい。物にするのは早かった。ティー打撃も右より左の方があっという間に飛ぶようになった。

恵まれた身体能力と勝負根性の原点はソフトボールに。「ゴルフ界を変えてくれそうな気がする。遠くの方に行った。すごいことじゃわ」。才能にはまだ伸びしろがある。【実藤健一】