2019年の最終戦まで、渋野日向子(21)には賞金女王に立つ可能性が残されました。最高の舞台となった今季ツアー最終戦。惜しくも2位に終わり、5位に食い込んだ鈴木愛に賞金女王争いで及ばず。鈴木が女王、渋野は賞金ランク2位で今季の戦いは幕を閉じました。「しぶこの足跡」と題し、WEB連載で今季の戦いを再掲載する最終回。全力を尽くした渋野に涙はなく、周囲に見せたのはあの笑顔でした。

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最後は「スマイル・シンデレラ」になった。最終18番パー4。バーディーを奪っても、優勝にも、賞金女王にも届かない。

それでも、渋野は「一番、気持ちが入った」と2・5メートルのチャンスを決めた。そして、体を伸ばして、最高に輝く笑顔を見せた。それは、1年間、力を出し切った心からの笑みだった。

「最後のバーディーで悔いはないな、と。スッキリしました。第1打は今日イチのドライバー。第2打を5番アイアンでダフッてグリーンに乗せ、そこも笑える。私を象徴する、本当にいい終わり方でした」

今季国内5勝目へ、ツアー本格参戦1年目で初の国内メジャー2冠へ、全力を尽くした。アウトをオール・パー。11番パー5で2・5メートルのパーパットをねじ込み、スイッチが入った。12番パー3は9番アイアンでピン根元に落とす、30センチのベタピンショットで初バーディー。13番の連続バーディーで通算7アンダー。しかし、そこまでだった。

「単独2位以上」なら、鈴木の結果次第で可能性があった女王戴冠も逃した。ただ「賞金ランク2位」に意味はある。

「1年よく頑張ったと神様が与えてくれたご褒美。まだ1位は早いよ、と与えてくれた試練かもしれません」

昨年のプロテストに合格した新人が、8月初旬の全英制覇で世間をあっと言わせた。だが、帰国後は思いとかけ離れた「スマイル・シンデレラ」のイメージが独り歩きした。

「9月の日本女子プロあたりですかね、一番しんどかったのは。(国内)メジャーだから結果出さなきゃと追い込みすぎて」

期待に応えたい一心で空回りした。

「全英後、本当にたくさんの人に支えられました。自分1人じゃ絶対にやっていけなかった。感謝しかない。それを今まで以上に実感できたのが、財産。これからのゴルフ人生に生かしたいです」

訳もわからぬうちに大ブレークした2019年。一言で表現するなら「謎」と言い爆笑した。

だが、2020年は違う。最大の目標は「東京五輪」出場だ。

「金メダル、取りたいですね~」

来季は2月のホンダLPGAタイランドの推薦出場、翌週のHSBC女子世界選手権(シンガポール)と米ツアー競技で実戦をスタートする予定。所属先は、あの元世界ランク1位宮里藍さんのサポートを続けるサントリーに決まり、年明けにも正式発表される。お世話になった今季所属のRSK山陽放送はスポンサーとして残る予定だ。

「東京オリンピックに向けて、しっかりやっていきたいですね」

これからは「謎」で終わらせない。本物の実力を備えた「渋野日向子」として、五輪での金メダル、その先に続く、再び世界を驚かせる旅へと歩んでいく。(おわり)