17歳の馬場咲希(日本ウェルネス高2年)が、歴史的偉業を達成した。1895年に第1回が行われたアマチュア最高峰の舞台で1985年の服部道子以来、日本勢37年ぶり2人目となる優勝を飾った。

36ホールで争うマッチプレーの決勝で、21歳のモネ・チャン(カナダ)を11アンド9で下した。主催者によると3番目の大差でのV。来年の全米女子オープン、AIG全英女子オープンなどメジャー4大会の出場権も獲得。世界に通用する175・3センチの飛ばし屋、ニューヒロインが誕生した。

   ◇   ◇   ◇

握り締めた右手を馬場が何度も揺らすと、大歓声が起きた。日本勢37年ぶり2人目の優勝。9ホールも残し、27ホール目で4メートルのバーディーパットを決めて決着。相手のチャンやキャディーらとグリーン上でハグ。涙が止まらなくなった。優勝インタビューでは「ラウンド中はずっと『勝つ、勝つ、勝つ』と考えていた。37年ぶりというのは聞いていて、服部道子さんに続いて名前を残すことができてうれしい」と笑顔になっていた。

出だし1番でボギーの相手に対し、パーをセーブし、まず1アップ。5番終了時点で4アップとして波に乗った。前半18ホールを終えて7アップの大量リード。後半開始までの2時間半余りの休憩中も「この休憩で流れが変わらないように」と、気を緩めることはなかった。

後半に入ると先に、相手に2つ取り返された。それでも22ホール目で2メートルのパットを沈め、先にバーディー。「パターが自分の思い通りに打てたので、相手にプレッシャーを与えられたかなと思う」。焦ったようにチャンは、1・5メートルのバーディーパットを外し、8ホールぶりに相手を上回った。1度つかんだ流れを逃さず、このホールを含めて6連続バーディー。この間、6連続パーだった相手を退けた。11アンド9は、122回の歴史の中で史上3番目の大差だった。

現在も伸び続けている175・3センチの長身を生かした平均270ヤードのドライバーショットは、米国でも確かな武器となった。加えて23ホール目には、25ヤードからチップインバーディーを奪うなど小技もさえた。「高校1年からやっと、全国大会で上位に行けるようになった」。この1年で急成長。6月の全米女子オープンでも予選通過。58キロと細身の体も増量に励み、さらなる飛距離を追い求める。

今大会で「そこだけを目指していた」という、来年のメジャー大会の出場権も獲得した。同姓、長身アスリートの故ジャイアント馬場さんのことは「全く知りません」という17歳。それでも故人が世界チャンピオンだったと聞くと「じゃあ、私も見習って」と、冗談交じりに世界一を目指す決意をのぞかせたことがあった。

メジャーを制して世界一-。そんな夢への第1歩として、伝統も格式も世界最高峰の大会を制し、まずは“アマチュア世界一”の看板を手にした。

◆全米女子アマチュア選手権 1895年に第1回大会を開催。1946年に始まった女子のメジャーで最も古い全米女子オープンより約半世紀前に創設されるなど、長い歴史と伝統がある。女子アマ最高峰の大会。予選ラウンドはストロークプレー、決勝トーナメントはマッチプレー方式。決勝戦は36ホールで争われる。優勝者に翌年の全米女子オープンなどの出場権が与えられる。80~82年にジュリ・インクスター(米国)、85年に服部道子、近年では10、11年にダニエル・カン(米国)、12年にリディア・コ(ニュージーランド)が制している。