ラグビージャーナリストの村上晃一氏(54)がワールドカップ(W杯)日本大会の主役候補を紹介するシリーズ第4回は、初優勝を目指すアイルランドの司令塔で、ジョニー・セクストン(34)です。

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2018年のワールドラグビー・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間世界最優秀選手)。現在、世界最高のSOと呼ばれるのが、セクストンである。

セクストン率いるアイルランド代表は、18年の欧州6カ国対抗で、イングランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリアを破る全勝優勝を達成した。同年11月17日には、地元ダブリンで世界最強のニュージーランド代表「オールブラックス」を、16-9で撃破。ホームでオールブラックスに勝ったのは史上初の快挙で、日本でのW杯では優勝候補の一角に挙げられる。そのキーマンがセクストンなのである。

1985年、アイルランド共和国の首都ダブリンで生まれた。幼少期にラグビーを始め、正確なキックで頭角を現すと、アイルランド高校代表、21歳以下のアイルランド代表など着々と階段を上った。09年11月、フィジー戦でアイルランド代表デビューを果たすと、この試合では、トライ後のコンバージョンゴール5本と2PGを100%の確率で決めて16得点。最優秀選手に輝いている。その後は、8歳上のベテランSOローナン・オガーラとレギュラーを争い、12年以降は背番号10に定着した。

プロクラブでは、アイルランドのレンスターで06年から13年までプレーし、個人得点は1000点超え。欧州王者にも導いている。その後、フランスのラシン92に移籍したが、15年からはレンスターに戻ってスコアを積み上げている。

一見すると、アスリートというよりも医師か科学者のような顔立ちだが、ディフェンスの穴を見つけた瞬間、一気に抜け出すスピードは爆発的だ。素早く正確なパス、キックパスで味方を走らせ、ドロップゴール(DG)の名手でもある。全勝優勝した18年の欧州6カ国対抗では、開幕戦のフランス戦で終了間際に約40メートルのDGを決め、15-13と劇的な逆転勝ちに結びつけた。アイルランドを強豪チームに押し上げた知将ジョン・シュミット・ヘッドコーチとの信頼関係も強固で、優れた戦術眼で勝利を手繰り寄せる。

W杯日本大会で、アイルランドは日本代表と同じA組に入る。現在、世界ランキング3位のアイルランドはこの組で1位通過が有力視されている。日本代表から見れば、そのアイルランドに勝てば決勝トーナメント進出が見えてくるということだ。セクストンが出てくれば、彼をいかに自由にプレーさせないかが勝利のカギになる。