ワールドカップ(W杯)出場20チームを迎える公認キャンプ地は全国で55件、61自治体。最終回は府中市(東京)、海老名市(神奈川)、上富田町(和歌山)の取り組みを紹介する。

府中市などが作ったルールブック
府中市などが作ったルールブック

府中市(イングランド、フランス) 三鷹市、調布市と連携して制作した「ルールブック」(A5判32ページ)が注目されている。日本代表歴代最多の98キャップを誇る「鉄人」大野均(東芝)が監修を務め、8万部を準備。市内の小中学校で配布した。プロップは像、ロックがキリン、SHは猿などと各ポジションを動物に例え、分かりやすさが話題を呼び、市外からも問い合わせが相次いでいるという。トップリーグのサントリーと東芝の練習場、W杯の開幕戦が行われる東京スタジアムが市内にあり、15年W杯後から「ラグビーのまち府中」を合言葉に掲げてきた。担当者は「W杯で終わりでなく、2チームとはその後も協力しながら市を盛り上げていきたい」と意気込みを語った。

市内の全小学校でロシア代表歓迎給食としてピロシキ、ボルシチが出された
市内の全小学校でロシア代表歓迎給食としてピロシキ、ボルシチが出された

海老名市(ロシア) 1年前の動揺がうそのように、ロシア受け入れの準備が進んでいる。18年5月、当初、同市をキャンプ地とする予定だったルーマニアが、出場資格のない選手が予選でプレーしたとして失格となり、ロシアが繰り上がりで出場を決めた。同市担当者は「朝礼でルーマニア語のあいさつを練習し始めた直後で、驚いた」と振り返るが、そこからロシアへの市を挙げた“猛勉強”が始まった。大会を応援する「えびなラグビーサポーター」は募集300人に対し395人が応募。学校給食でピロシキが出されるなど、開幕が近づくにつれて市内の機運も高まりつつある。ロシア-スコットランド戦では市からバス6台でロシアの応援にかけつける予定だ。

18年3月、和歌山・上富田町に寄贈された花園のポールへキックする元日本代表大西将太郎氏
18年3月、和歌山・上富田町に寄贈された花園のポールへキックする元日本代表大西将太郎氏

上富田町(ナミビア) W杯未勝利国を6大会目での初白星へ後押しする。強豪の大阪朝鮮高が03年、花園初出場を決めた府予選前に直前合宿を実施。昨年も女子サッカーU-20日本代表「ヤングなでしこ」が同地でチーム力を高め、U-20W杯初制覇につなげた。15年和歌山国体が迫った13年にスポーツ観光推進協議会が発足し、和歌山県協会の滝本拓哉理事(32)は「不思議な縁があるパワースポットと感じてもらえている」。天然芝2面、人工芝1面、室内練習場、トレーニングジムを持つ同町の特産品は「ひょうたん」。今月8、9日にナミビアのルスウェニョ駐日特命全権大使が視察した際には「三拍(瓢)子そろう」「無病(六瓢)息災」といわれる縁起物として歓迎式で贈呈した。