速いテンポのラグビーで勝て-。前サントリー監督の沢木敬介氏(44)は、13日にスコットランドとの大一番を迎える日本代表にエールを送った。控えメンバー中心でロシアに大勝した相手を警戒し、台風通過後の強風に気を配りながらも「自信を持って自分たちのラグビーをすること」と強調。勝ち点では有利な立場にいるものの「必要なのは勝利」と言い切った。

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スコットランドとの対戦は、日本ラグビー界にとって歴史的な試合になる。ボーナスポイント(BP)を取れば敗れても決勝トーナメント進出の可能性があるが、考えるのはあくまでも勝利。勝たなければいけない。勝つためのゲームプランで惜敗した時、結果として7点差以内の負けにつくBPが効いてくる。

スコットランドはアイルランドに大敗したチームではない。9日のロシア戦はメンバーを大幅に入れ替えて快勝した。控え選手がいいパフォーマンスをしたことで、チームとして勢いを増している。いい方向に行っている相手との対戦は、決して簡単ではない。

通過する台風の影響もある。日本のスタジアムは水はけがいいので、雨さえやめば芝の状態に大きな問題はないはず。それよりも、風を考えないといけない。6、7メートル以上だと影響がでると思っていい。スコットランドは雨や風などコンディションに恵まれない中でのプレーに慣れている。日本も風を考えたゲームプランを立てる必要がある。

プランは風がフォローかアゲンストかによって、大きく異なる。フォローの場合は敵陣深く入り込み、そこに相手を封じ込めることが大切だ。アゲンストであれば、不安定になるキックで簡単にボールを手放さずにパスでボールをつなぐことだ。試合前にサイドを選ぶ場合は、風上をとるのか風下なのか。これも、決めておいたほうがいい。

福岡が初先発するなどメンバーが変わる。松島と福岡のWTB陣はともにコンディションがいいし、いい選択だと思う。ケガから復帰したFBトゥポウ起用も風の中でのハイボールの処理を考えればベストだ。

調子が上向きなスコットランドにも弱点はある。試合の序盤に弱いのだ。今年の6カ国対抗から今ワールド・カップ(W杯)まで、テストマッチ12試合の総失点232のうち、約3分の2は前半に奪われている。しかも、全体の4割近くは前半20分までの失点。3試合で開始2分にトライを奪われている。相手のエンジンが温まらない試合開始直後に先制できれば、有利に試合を進められる。

日本が目指すのは、アイルランド戦のような試合。スコットランドのモールやFWの近場からの攻めを、しっかり止める。さらに、得点源であるSHレイドローとSOラッセルにプレッシャーをかけ続ける。ここがカギになる。不用意なキックをせず、ボールをつなぎながら効果的にキックを使う。さらに、速いテンポでボールを動かす。それができれば、勝てると思う。

もう1つ、レフェリーへの対応も重要。日本はここまでリーチ主将がコミュニケーションをとって、いい対応ができている。スコットランドは決勝トーナメント進出を狙って、高いエナジーで向かってくるはず。日本はそれをしっかりと受け止め、さらに上回らなければならない。最後は横浜に集まるホームの観客が歴史的な勝利へ日本を後押ししてくれるはずだ。

練習中、談笑するラッセル(左)とレイドロー(撮影・狩俣裕三)
練習中、談笑するラッセル(左)とレイドロー(撮影・狩俣裕三)
ハイボールを取り合うスコットランドの選手たち。左端はレイドロー(撮影・狩俣裕三)
ハイボールを取り合うスコットランドの選手たち。左端はレイドロー(撮影・狩俣裕三)