「勝者のマインド」が歴史的快挙を生んだ-。日本が初の決勝トーナメント進出を、大会史上初めてティア2チームとして1位で達成。U20代表ヘッドコーチで姫野らを指導し、前回大会で代表コーチを務めた沢木敬介氏(44)は、躍進のカギは意識改革にあるとした。

知将として知られる前サントリー監督が、前々回までW杯7大会でわずか1勝だった日本が急激に強くなった裏側を解説する。

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本当に強かった。スコットランドが弱かったとか、何か特別な条件に恵まれたとか、そういう勝利ではない。普通に戦い、普通に勝った。最後は迫られたが、ボーナスポイントのアドバンテージで危なげなく逃げ切った。見ていて、笑ってしまうほどの完勝だった。

今の選手は「インターナショナルで勝つために何が必要か」が分かっている。そして、勝つためのゲームプランを確実に遂行するスキルやフィジカル、フィットネスを持っている。何よりも大きいのは「勝者のマインド」があることだ。

かつての日本は「ティア1と対戦したい」だった。負けることを前提に「接戦すること」を目標にしていた。選手も、スタッフも、協会も、本気で勝とうと思っていなかったし、勝てるとも思っていなかった。

8年前、就任したエディー(・ジョーンズHC)が最初に取り組んだのは「勝つ」という意識を選手に植え付けること。ティア1との試合を経験し、選手がスーパーラグビーに挑戦することで、意識は変わった。「ドメスティック」だった選手の考えが「インターナショナル」になった。

前回大会で南アフリカなどから3勝した。それまで7大会24戦で1勝だけだったから大躍進のように思われたが、選手やスタッフは「勝つこと」に驚きはなかった。「敗者のマインド」はエディーの4年間で「勝者のマインド」になった。

前回大会から4年、日本はさらに成長した。ジェイミー(・ジョセフHC)は最初、キック戦術を取り入れた。選手は戸惑ったが、コミュニケーションを重ねながら日本人に合った今のスタイルを作り上げた。松島、福岡の両WTB、流、田中のSH陣は世界レベルに成長。世界に勝つ独自のスクラム文化も生まれた。

この1勝は、選手やスタッフだけではなく、日本ラグビー界が「勝者のマインド」を持つきっかけになるはず。ティア1を連破して世界でも、国内でも、日本ラグビーの「ステータス」は間違いなく上がった。選手にとってのプレッシャーは大きくなるが、励みにもなる。ラグビー界の今後を考える上でも、大きな大きな1勝だった。

後半、独走トライを決めるWTB福岡堅樹(撮影・狩俣裕三)
後半、独走トライを決めるWTB福岡堅樹(撮影・狩俣裕三)