<エンゼルス0-1オリオールズ>◇29日(日本時間30日)◇エンゼルスタジアム

 【アナハイム(米カリフォルニア州)=大塚仁】オリオールズ上原浩治投手(35)がエンゼルス戦で1球セーブをマークした。1-0の9回2死一、三塁というピンチの場面で登板したが、4番ハンターを1球で二飛に仕留めた。リリーフで好投を続けてクローザーの地位を勝ち取り、これで4試合連続セーブとなる4セーブ目となった。プレーオフ進出の望みが絶たれたリーグ最低勝率のチームにあって、来季につながる結果を残し続けている。エンゼルス松井秀喜外野手(36)は上原との対戦はなく、代打で見逃し三振に倒れた。

 1球たりとも気が抜けない、しびれる場面に上原は奮い立った。1-0の9回2死一、三塁という大ピンチで、すべてを託されてマウンドに上がった。打席には昨年4月29日に本塁打を打たれている4番ハンター。「胃が痛いです。打たれたら先発の勝ちが消える。それだけは避けたい」。長く先発で活躍してきたからこそ感じる怖さ、重圧、プレッシャー。それらのすべてを振り払い、初球にストレートを投げ込んだ。力ないセカンドフライが打ち上がる。1球で勝利を呼ぶと、両手でガッツポーズをつくり喜びを爆発させた。

 堂々の火消しぶりは、もはや並み居るメジャーのクローザーに引けをとらない。21日(同22日)レンジャーズ戦でのメジャー初セーブ以来4試合連続セーブ。後半戦は17試合で防御率0・93と抜群の安定感を誇っている。「エンゼルスも苦しいと思いますけど、オリオールズはもっと苦しい。でも勝つことの楽しさを今僕らは味わってます」。2年間で4度も故障者リストに入り、チームの低迷を止められなかった悔しさがある。自らを「便利屋」と呼び、先発へのこだわりを封印して敗戦処理から実績を積み上げた。優勝争いから遠く離れていても、あこがれ続けたメジャーのマウンドで投げるボールにはすべての場面で気持ちがこもっていた。

 エンゼルスにシーズン全勝という球団史上初の偉業に貢献し、チームメートと喜び合う姿に最下位チームの暗さはない。仲間はファーストネームやあだ名で呼び合い「ブルペンでみんな仲良くやってますから」と充実の笑顔を見せる。リリーフ投手としての実力に、球団内でも来季契約の検討を始めるなど株は上がり続けている。自らの運命を切り開く1球を、これからも全力で投げ続ける。